今日と明日の変化とは ページ2
「ナビィー×コ」
「歌いながら作文を書くのもいいけど、文字じゃなくてリッツの絵を描くのはやめてくれ」
意外と上手いんだよ、零される。
歌か絵か分からないけど、どちらの分野も自身は割とある。
「ほら消せって」
「嫌だ、最高傑作なんだこのリッツは」
「お前なぁ、…」
真緒ちゃんが、しまったという顔をした。消しゴムをこちらに突きつけたまま。
お前なぁ、の後に、何かタブーになるようなことを聞こうとしたんだろう。
まぁ、私は何を聞かれても気にしないけど。
指摘されても、何も。
「悪りぃ、ごめん」
「どっちも同じような言葉だからね、二度も謝るようなことしてないでしょ」
「だな」
「だよ」
いつもと同じ空気に戻って、少し安堵してから気付いた。
そうか、私、怖かったんだ。
指摘されても構わないって言う割に、今の雰囲気が壊れるのが怖かった。
青春を、壊したくなかった。
「ねぇ、りっちゃんは」
「いいのかお前」
「いいよ、話を聞いて」
まだ、作文用紙の上に最高傑作が乗せられたままだったので、
紙がしわくちゃにならないよう、自分で丁寧に消した。
あーあ、今までにない出来だったのに。
「りっちゃんはさ、ちゃんと居たいところに居るの？」
「あぁ、アイツはちゃんと望んであの場にいるよ」
幼馴染は、今まで見たことないみたいな、真面目な顔をする。
いや、見たことあるなぁ。
数学が学年で下から二番目だったって言ったときにも、
急に正座になって、そんな顔をして私を諭したものだった。
ちなみに今は、衣更真緒ちゃん先生のおかげでギリ赤点を回避している。
「あそこに行ったら、もう今みたいに会えなくなるの？」
「ああ。つっても、二度とではないけど。“今まで”がちょっと減るだけ。」
「真緒ちゃんも行くの？」
彼は、言葉に詰まった。
否、私が詰まらせたのだった。
セミの音が消えたのに、幼馴染が一緒に楽しく、騒がしくやってくれたから気づかないで。
独りになったら、消えた瞬間を覚えてしまう。
もうじき、そうなりそうな気がしたんだよねぇ、真緒ちゃん。
·
蝉の声が消えたのに、長いこと気が付かなかった。
続く
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作者名：のんしゅがあ | 作成日時：2018年7月19日 14時
