さすが ページ29
ハンジside
私はAの手を引いて走っていた。
その時、Aに呼び掛けられた。
「ねぇハンジ。どこに行くのか、どうしても教えてくれないの？」
うーん…
しょうがないなぁ。
「教えてあげるよ。新しい店ってのは嘘。断られたのも、嘘。行くのは、調査兵団のみんなのところ。実験を見てもらおうと思ってさ」
私が言うと、Aの顔が輝いた。
うん、可愛いね。
「ちょっと待ってて。五分で戻ってくるから！」
そう言って駆け出して行った。
待つこと約5分。
Aが戻ってきた。
着ている服はさっきと変わってない。
ハイウエストの淡い青のスカート。
白いカッターシャツ。
でも今はその上に調査兵団のジャケットを羽織っていた。
そして立体機動装置をつけている。
それにでかい荷物も。
いやいや、実験見るだけなんだけど？
「私、外泊の許可取ってきた！一週間だけだけど。でもこれ持ってけって。しょうがないから持ってくけど。ねぇ、いいでしょ、ハンジ？」
そんな目で見られたらオッケーするしかないじゃん。
私は頷いた。
Aは嬉しそうに笑って馬車に飛び乗った。
「A、その中身ってなに？」
私はでかい荷物を指差して聞いた。
Aはうんざりしたように見た。
「これね、私の服。私、リヴァイに背骨直してもらったんだけど、それを固定するためにわざわざハイウエストのを着てるの。ヒストリアとのその会話を聞かれたみたいでさ。全く、お節介だよね」
なるほどねぇ。
確かに姿勢が良くなった気がするけど。
Aはそこから紙を引っ張り出して私に見せた。
「見て！これを泊まってる間に完成させろって！私、女王だよね？なんで命令されてんの？」
Aが持ってるのは何かの楽譜。
さっきの愚痴からしてピアノかバイオリンだと思う。
音楽をよく知らない私でも、すごい複雑だってことがわかる。
A、すごいなぁ。
「それになんか料理習ってこいってさ！なんなの？」
着くまでAの愚痴は続いた。
いやぁ、なんか面白い。
Aには悪いけどさ。
さすがは女王様。
大変だなぁ。
人ごとだけど。
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作者名：カシオペア | 作成日時：2017年9月16日 8時
