北山は何がしたいの ページ41
痛そうで、痛そうで、その藤ヶ谷に対して辛いという感情しか湧かなかった北山は、顔を歪めることしか出来なかった。そんな北山を藤ヶ谷は置いて行くように歩みを進める。
けれどそれは叶わなかった。力強く藤ヶ谷の腕を北山は掴んだのだ。藤ヶ谷はその衝撃で動きを止める。反射的に藤ヶ谷はすぐに北山の方を振り返った。その藤ヶ谷の目にはまた涙が零れていた。
北山はその涙を拭うようにして藤ヶ谷の頬に触れた。急に頬に触れられた藤ヶ谷は肩をぴくッと跳ねらせる。北山の表情は同情のような、何か求めているような顔だった。藤ヶ谷はそんな訳が分からない北山の表情と行動に動揺を隠せなかった。
F「……北山は何がしたいの、」
K「……っ――――。」
藤ヶ谷はそういうと北山をきつく睨んだ。それで北山はどん底に落とされたような顔になる。藤ヶ谷の腕を掴んでいた手が緩む。振り払えば簡単に立ち去れるはずなのに、藤ヶ谷はそうしなかった。まるで答えを求めるように立つ尽くしていた。
K「……正直に話し合おう、」
藤ヶ谷はその言葉に衝撃を受けて涙が止まる。一瞬、睨んでいた目元が緩んだが再び北山をきつく見据える。藤ヶ谷が怒るのも無理もない。振り回され続けた藤ヶ谷の精神は疲れ切っていた。だからこそ北山にきつく当たるのだ。北山もその事は承知の上で藤ヶ谷を見つめる。
北山の反対の手からはビニール袋はとっくの前から手放されていて、床に無造作に置かれていた。そのビニール袋を忘れ去った北山は鍵を認証してさっさと藤ヶ谷の腕に再び力を籠めて開かずの自動ドアの向こうに進んでいく。
藤ヶ谷はそんな強引な北山にされるがままに引っ張りられてゆく。エレベーターの中は空気がぎゅうぎゅうに引き締められたように息苦しかった。
そのせいか少し藤ヶ谷の呼吸が荒くなっていた。北山はその藤ヶ谷に気付く素振りを見せなかったが、藤ヶ谷の腕をずっと離さず更に力が加わった。それはまるで藤ヶ谷を安心させるように。
それでも藤ヶ谷の呼吸の荒さは止まる気配は無く。いつの間にか選択した階に着いていた。苦しそうな藤ヶ谷に酸素を与えるためか、北山は早々とエレベーターを出て行った。
そこでは夕焼けが照り輝いていて、酷く眩しく見えた藤ヶ谷は強く瞼を閉じる。そして深々と深呼吸をして肺に酸素を送り込む。けれど藤ヶ谷の心は楽になることは無く、表情はまだ苦しそうだ。
そんな藤ヶ谷を軽く見据えた北山は自分の部屋に向かって行く。景観を眺めていた藤ヶ谷は急に引っ張られて足がもたれるが、北山はさっさと先程の鍵を取り出した。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時