スミレ ページ36
集合時間からとっくに五分が過ぎていた。けれど北山が姿を現すことは無く、ただ時間と藤ヶ谷の不安だけが募っていった。
五分も遅刻しているのにも関わらず、北山は右手にはフランクフルトと焼きそばを抱え、左手にはチョコバナナとじゃがバターを持っていた。完全に祭りを楽しむ一人のおじさん化している北山。
当然の事北山の頭から藤ヶ谷の存在は忘れ去られていた。ふと北山は中央にある時計をチラ見する。長い時計の針を見て、北山は何か違和感を持つ。
次はチラ見ではなくジッと空高くある時計を擬視する。「自分は何か忘れていないか」という疑問が頭に浮かぶ。けれどもう少しの所で喉に突っかかってなかなか思い出せなかった。
しばらく時計を見つめて長い針が動くと同時に北山は目を大きく見開いて顔を青ざめる。頭の中で「藤ヶ谷!!」と叫びながら集合場所に向かって行った。
集合時間から十分が経過した。花火が始まるまで十五分を切ったしまっている。大きく息を吐いた藤ヶ谷は少し怒りを露にしているようにも見えた。
すると藤ヶ谷の視線の先では、料理を両手に抱えてキャップを浅く被った青年が走ってきた。藤ヶ谷はそれがすぐ北山だと気づき表情が一気に明るくなる。
さっきまでのモヤモヤがどっかに行ってしまっているようだった。北山は血の気が抜ける勢いで、手に持ったものを落とさないように藤ヶ谷の元に慌てて向う。
やっと藤ヶ谷の元に辿り着けた北山は、腰を折り下を向く。大分息が上がっており、肩で大きく呼吸をし、息が整えようとする。
そんな北山に寄り添って藤ヶ谷は優しく背中を撫でる。藤ヶ谷の優しさに触れ、北山は一瞬顔をしかめるが、頭をすぐに上げて藤ヶ谷にいつもの笑顔を見せる。
その顔は汗だくで、持久走でもして来たんじゃないかと思わせるほどの量だった。今は少し日が暮れているけどセミが元気よく鳴いていて、ムシムシする温度だったので汗を垂らしているのだろう。
K「わりっ、藤ヶ谷。遅れちまった、」
ニコッと笑う北山を心配そうに伺っていた藤ヶ谷だが、いつも通りの彼の言葉にホッと胸を撫で下ろし、北山が持っていたじゃがバターを取り上げ歩き出す。
K「ちょっ!何すんだよ!」
慌てて藤ヶ谷の背中を追いかけた北山はじゃがバターを食べ歩きする彼の隣に立つとそのまま睨みつけた。そんな北山を知らんぷりして、じゃがバターを口に入れる。まだそのじゃがバターには熱が籠っていて藤ヶ谷の口の中の温度が一気に上がる。
口を大きく開けて熱を逃がす藤ヶ谷を目のあたりした北山は少し屈みながら声を上げる。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時