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紫のアネモネ ページ31

北山の顔はただ苦しそうで、とても悲しくて、どん底に落とされたような顔にも見える。そんな反応をされた藤ヶ谷も顔を歪める。もしかしたら振られてしまうのかもしれないと想像してしまった藤ヶ谷は目を潤ませた。

今にでも泣き出しそうな藤ヶ谷を置いて、北山は彼に向かって笑顔を見せた。けれど完全の笑顔ではなく、眉をひそめていて眉間には皺が寄っている。それを見て藤ヶ谷の顔は更に歪み、背筋が凍るような感覚と色んな感情が押し寄せてきた。

  K「そんな顔すんな」

優しい声音が藤ヶ谷にかけられた。けれど藤ヶ谷にとってはあ苦しかった。振られるのはこんなに苦しいのかと初めて知った藤ヶ谷。少なくとも藤ヶ谷はこんな感情知りたくなかったと思ってしまう。

  F「……ぉ、っお、れ。……」

藤ヶ谷が何故か謝罪の言葉を口にしようとする。だが押し潰された胸が苦しくて声にならなかった。北山は「もう喋るな」と言っているかのように藤ヶ谷の背中を優しくさすった。

  K「大丈夫。俺はお前を振らないから」

それは嘘の混じったような声だった。藤ヶ谷もそのように聞こえて「本当?」と訴えるようにゆっくりと北山との目線を合わせる。

その目は先程の優しさを崩しておらず、けれど更に悲しみが加わったようにも見える。嘘はついてないようだ。

  F「……じゃあ、どっちなんだよ、」

心の痛みに辛かったため、少し余裕がないのか藤ヶ谷は北山に対して冷たく問いを投げた。北山は藤ヶ谷の態度を少し悲しそうにしてたが、ゆっくりと口を開き答える。

  K「……少し期間をくれないか?」

  F「……返事、を?」

  K「……うん。」

その答えを聞いた藤ヶ谷の脳内は?マークでいっぱいになっていた。それもそのはず、北山は即決派ですぐに返事をくれると思ったが、北山は「期間がほしい」と言った。

  F「……分かった、」

  K「ありがとう」

すぐに返事が欲しかったが、北山にも事情があると思うしすぐに返事は帰ってくるだろうと思った藤ヶ谷は渋々ながら了承する。

すると北山はにこやかにはにこみ礼を告げた。そして藤ヶ谷に寄り添っていた北山の手はその背中から離れて行った。そこにはかすかに温もりが残っている。

その温もりが無くなってしまうことに藤ヶ谷の悲しみが込み上げた。涙を我慢するように口を閉じて、下を俯いてただ北山が去って行く音を聞くことしか出来なかった。


そして数日があっという間に過ぎて行った。けれど未だに北山の返事は無く、藤ヶ谷は不安の日々を過ごしていた。

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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時

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