第三章 サツキ ページ17
今日は仕事がオフだった。けれど藤ヶ谷は何もすることなく、ベットの上にいた。そこではずっと携帯の番号を見つめている。そのスマホの画面には“北山”という文字があった。
遊びに誘うか、誘わないか迷っているところだった。途中横尾に誘われたが断り、北山の事を優先したのにも関わらず、まだ言い出せないままだ。
(『今暇?』)
このたった一文なのにいざそう打とうと藤ヶ谷の指はかすかに震えを帯びていた。その理由は昨夜に遡る。
北山にいきなり殴られ、その後謝りの電話を入れたが怒鳴られて終わったからだ。藤ヶ谷はまだ北山をここまで怒らせているのか分かっていなかった。
けれど殴られた以上、自分は何かとんでもない事をやらかしてしまったのだと悟っていた。怒らせたとしてもここで藤ヶ谷は引くわけにはいかない。
ここで距離を置いたら結局、歩む未来は同じになってしまう。ここまでして来た意味が全て水の泡になってしまうから使命感を抱いていた。
だが、現実は上手くいかない。恐怖、不安などの不の感情が藤ヶ谷を襲う。彼は元々意気地なしなので、人一倍その感情は大きく膨れあっていた。
藤ヶ谷がずっとスマホを眺めていると一本の電話が彼に届く。もしかしたら北山かもしれないという期待を密かに抱きながら、名前を見ずにすぐに応答する。
F「もしもし!」
2「あっれー?ガヤさん珍しいね。そんな速く電話出るの。」
その期待はすぐに崩され、藤ヶ谷の耳に届いたのは二階堂の声だった。藤ヶ谷は目から光が消え、げんなりする。
F「……なんだよ。ニカかよ、」
2「ちょ、いきなり酷い事言わないでよ!遊びに誘おうと思ってたのに〜」
藤ヶ谷の声は底に落ちたようなトーンに変わっていた。そこにすかさず二階堂は突っ込みを入れる。けれど次聞こえた声は藤ヶ谷を奮いただした。
K「……なあ?言っただろ誘っても無駄だって、」
2「えー、せっかくの休暇なんだからさ、みんなとどっか行きたいじゃん!」
F「え!北山いんの!?」
K「……いますー、なにか問題でもー、」
F「い、いや!全然!行くよ!」
2「え!まじ!やったー!」
何故か乗り気では無かった奴が、北山がいると分かっていく気になっているのは、ほぼほぼ好きと言っているようで藤ヶ谷は予定を聞きながら照れ臭そうにしていた。
これから二階堂、千賀、北山、藤ヶ谷で動物園に行くらしい。藤ヶ谷は子供らしいし、動物園は汚れるから普段は絶対に行かない。だが誘いに乗ったのは彼のおかげだろう。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時