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アネモネ ページ6

藤ヶ谷の目は据わっていて、虚ろだった。数分間、北山の頭を撫でている。だが北山の反応はもちろんなかった。

もし彼が生きていたら顔を真っ赤にしていたのだろうか。


その考えが自分自身を苦しめる羽目になり、藤ヶ谷はぎゅっと自分の胸を掴む。

顔がだんだん歪み始め、目には涙の膜が張っていた。手はずるずる下にさがり頬に添える。


そしてそのまま藤ヶ谷は北山に顔を近付けて、唇を重ねた。周りからみたらただ、死体にキスしてるだけ。縁起が悪いと思うだろう。

だが、藤ヶ谷にとっては胸いっぱいだった。


いつか、そのキスは北山から贈られる事を願ったような顔でずっと北山を見ていた。最後に北山の柔らかいほっぺをつねって藤ヶ谷は部屋を後にした。


炎は静かに燃え上がり、死体はその中にゆっくりと入っていった。燃やされている時間もとても長く、儚かった。本格的に北山との別れが訪れる。

メンバーはそれぞれの想いを炎の中に葬った。



数分後火葬炉から骨が出てくる。その骨が北山だと思うとメンバーの顔が歪む。まずは家族が行い、
メンバーの番が回ってきた。一人ずつそっと優しく入れていく。その手はみんな震えていた。


藤ヶ谷はポーカーフェイスを装い、何事もない顔で行っていた。その顔の裏にはどんな事を考えているのか、誰にもわからなかった。

流石にお墓に骨を入れる所は家族のみにして、そのまま解散となった。北山の家族は、「いつでも墓参りしてきてください。きっと宏光も喜ぶと思います。」と言った。


  Y「お前まだ吹っ切れてないだろ」

  F「………。」

  Y「顔がそう訴えてる。」

  F「………。」

家に帰るまでの帰り道。藤ヶ谷が心配だからと言って、横尾に送ってもらっている途中だった。横尾の言ってることは藤ヶ谷にとって図星だった。図星だから故、何も言えなかった。


その後横尾何も言わなくなり、藤ヶ谷も俯いたまま月光だけが目立っていた。家に着くと足をもたつながら玄関に向かう。そんな藤ヶ谷を横尾は不安な目で見ていた。


自分の部屋に入るとゆっくり歩みながら自分のベットに飛び込んだ。うつ伏せのまま、表情は見えなかった。

ずっとこうしてても何も変わらないのに藤ヶ谷には、他のことをする気力すら今の彼には無かった。


ーーーー第一章完結ーーーー
第一話『あなたを愛してます』
第二話『私を見つめて』
第三話『純愛』
段四話『希望』
第五話『私はすべて失った』
第六話『恋の苦しみ』

全て花言葉になります。

第二章 オダマキ→←スカビオサ



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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時

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