ヒペリカム ページ39
F「……な、んで」
驚いた藤ヶ谷は思わず心の声が漏れてしまった。それを近づいて来ていた横尾がその声を拾い、首を傾げる。
Y「何が、なんでなの?」
硬直していた藤ヶ谷はいきなりかけられた言葉に反応して、一瞬肩を小さく跳ねらす。そのまま横尾に向けた藤ヶ谷の顔は、眉を深々とひそめて世界の終りのような表情をしていた。声をかけただけなのにそんな顔をされて横尾は、少し鳥肌が立った。
F「……どうして北山がいないの?」
藤ヶ谷は北山がいなくなってしまったあの時の酷く苦しい気持ちを思い出してしまい、北山がいないことは何があったのではないかと感じてしまいその表情が曇ったのだ。横尾はいつ通りでは無いと察したが、藤ヶ谷を不安にさせないように優しく微笑んだ。
Y「みっちゃんは、今日体調不良でお休みだよ」
それを聞いた藤ヶ谷は足から崩れ落ちそうになった。また北山がいなくなってしまうのでは無いかと思ってしまったからだ。もたれそうな足を必死に抑えて何とか何事も無かったかのようにスマートに立つよう努める。
けれどその変化を横尾は見逃さなかった。藤ヶ谷の肩に優しく手を添えてここ笑みかける。藤ヶ谷はその笑顔に少し救われたようで顔がかすかに明るくなった。
Y「……太輔、もう先に帰っちゃいな」
F「……え?でも仕事が、」
Y「今日みっちゃんいないから太輔はほとんど暇だよ。だって一番のシンメの撮影が無いからねw」
「帰っていいよ」と言われた藤ヶ谷は迷いのせいか押し黙っていた。下を俯きながら悲しそうな目をしている。そんな藤ヶ谷に催促するように横尾は軽く背中を叩いた。
Y「太輔には行かなきゃいけないところがあるでしょう?」
横尾にそういわれたとき藤ヶ谷の目が星のように一瞬輝いて光ったような気がした。その後藤ヶ谷は肩からずり落ちていたバックを再び肩にかけ直して、進行方向を逆にして勢いよく歩き出した。メンバーは前に進む藤ヶ谷をまた温かい目で見守っていた。
本能に任せて足を進めていたため、あっという間に彼が住んでいるマンションへと辿り着いた。藤ヶ谷の中では不安でいっぱいだったが、それよりも彼に会いたいという気持ちの方が強かった。その想いに頼り、そのままマンションの入り口の自動ドアを開ける。
その先のガラス張りの自動ドアはもちろん開かれず、藤ヶ谷は息を吐いた後ゆっくりと彼の部屋の番号を入れていく。そして最後は呼び出しボタンを押すだけだ。
そこで藤ヶ谷の指が動きを止める。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時