アイリス ページ13
F「……んぅ…ん……?」
藤ヶ谷は自分のベットで起き上がる。その部屋はしんとしているが北山が死んだ頃の部屋の空気とは違って、和やかで誰かの香水の匂いが鼻につく。
起きるのが少し憂鬱なのかゆっくりと身体を起こす。我に返ったのか藤ヶ谷は素早く自分のスマホを取って日にちを確認する。スマホは2021年9月17日を指していた。
F「……やった。本当に戻って来た……!」
普段あまり独り言を言わない。けれど歓喜のあまりつい声を出して、喜びを露にする。その後すぐ冷静の藤ヶ谷に戻りある人物に電話をかける。
そう今日は特別な日。大切な言葉を伝えなければいけない日だった。ワンコールでは出ず、ツーコールでやっと電話に出てくれる。
出てくれるか不安だった藤ヶ谷は安堵する。けれど相手からかけられた言葉はとても冷たく、戸惑い混じりの声だった。それでも藤ヶ谷は嬉しそうに耳を預ける。
K「……もし、もし。なんか用……?」
F「もしもし。あのさ、伝えたいことがあって……」
K「……何、」
その電話の相手は北山だった。急かす様に内容を聞き出す北山は速く電話を切りたい気持ちが伝わってくる。それでも藤ヶ谷はめげずになるべく優しい声で話し始めた。
F「……今日、お前の誕生日じゃん?だから、」
K「……だから?」
恥かしいのか藤ヶ谷は少し頬を赤くする。もじもじしてなかなか言えない藤ヶ谷を北山は冷たい態度だが待ってあげていた。やっと決意が出来た藤ヶ谷は口を開く。
F「お祝いの言葉を伝えたかったんだ。」
K「……ん。」
F「ハッピーバースデー。幸せになれ」
K「……え、」
少し照れくさそうに返事した北山の声は、藤ヶ谷の声を聞いた途端戸惑いの声に変わる。「幸せになれ」まるで他人事のような一言だった。
けれど藤ヶ谷にとってはこれから3日後、命を落としてしまう北山にお祝いの言葉はとても辛く、複雑だった。これでも精一杯に伝えた藤ヶ谷は顔を歪めながらも満足そうに見える。
F「……んじゃ、切るから」
K「え?ちょ、まっ」
北山の感想なんて聞きたくなかった藤ヶ谷は彼の声を遮っても電話を切った。いきなり電話を切られた北山はとても不服そうな顔をしていた。けれどその頬は少し赤い。
タイムリープ出来ることが分かった藤ヶ谷は再び元の日にちに行きたいと宣言して、姿を消す。その間藤ヶ谷はある思いを言葉にして残しておく。
F「今の俺はお前を幸せにできないけど、絶対戻って北山を幸せにするから。」
その顔はまるで夢を追う少年のようだった。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時