白縹を汚したくて。２ ページ12
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｢Aちゃーん｣
ハッと、彼の声に現実に引き戻される。
またやってしまった。
いつもいつも、こんな妄想ばかり。
せめて、学校に居る内はやめた方がいい。
そう思いながら、左隣の席に座る及川に視線を向けた。
｢何、及川｣
｢あのね、俺彼女できたんだー｣
彼はそう言うと、手をブイにしてこちらに向けて。ニッコリと、可愛らしく微笑んで見せた。
眩しい。
｢へー、そなんだ。
良かったね｣
私は特に、焦りを顔にも出さずにそう返して。
ふわっと、からかうように笑ってあげる。
こんなのは、日常茶飯事。
及川徹は、モテる。兎に角、モテる。
だから、彼女はすぐ出来る。同じクラスになって、何度彼女が出来て、別れたのを見てきたことか。
だから、こんなの慣れている。
こんな言葉じゃ、動揺しない。
｢まあねっ。
凄い可愛い子でさー、なんか、笑った顔がお花みたいで。
ほんと、可愛いの｣
多分、その女より及川の笑顔の方が100倍可愛くて、綺麗だと思う。
そんな言葉も、勿論表には出さない。
出したら最後。
__私は、終わってしまう。
｢へー、今度見てみたい｣
｢いーよー。4組の子だから、今度紹介したげる｣
紹介…って。
私たち、ただのクラスメイトで、ただの友達なのに。
まあ、及川がそうしたいのなら何でもいいけど。
そんなことを考えながら、彼女について話し続ける及川の腕に目を向ける。
半袖のシャツから覗く、彼の長い腕。
白くて、運動部だから程よく筋肉がついていて、でもやっぱりそんな筋さえも美しくて。
そんな及川の綺麗な所が、全部全部好きだ。
…全部全部、好きな筈なのに。
私はそんな彼を、�牘�したい�瓩箸癲∋廚辰討靴泙Α�
誰にも取られぬよう、独り占めにしたい。
女友達は当然、男友達とも連絡は取らせたくない。
岩泉なんか論外だ。
全く日焼けしていないその綺麗な首筋に、痕を付けてみたい。
キスをした時、そのふわふわとした唇を思いっきり噛んで。血を流させたい。
綺麗だからこそ、真っ黒にしたくなる。
…そんな心の中真っ黒の私と、白縹色の彼は似合わない。
隣に居ては、いけない。
美しい彼を汚してしまってはいけない。
一緒になってしまっては、いけないのだ。
｢Aちゃん、聞いてるー？｣
｢きーてるよ。彼女さん、可愛いんでしょ？｣
｢…うんっ。すっごい、可愛い｣
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
