【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

誰かが居る　沖田side ページ8

…きっと、俺がAの意思を無視して、お前は黙って護られていればいいとでもいうように引っ込ませたりしたら、Aは傷付くだろう。必ずと言っていいくらいの確率で、傷付いてしまうだろう。俺の言葉によって。選択によって。どの道傷付けることになってしまうのだろう。そして、Aは自分がまだまだ弱いからなんだと。もっと強くならなければと、思い詰めるだろう。俺達が討ち入りに出ていくのを見送ってから、もしかしたら泣いてしまうかもしれない。そんな想像が悶々と俺を責め立てるように頭の中に立ち込めていく。無意識のうちに両手を握り締めて、進む足を早めていた。気持ちばかりが焦って、不安で仕方がない。

息苦しくて、何者かに首を絞められているような気分だった。けれど、そんな奴が居るはずないし、居るとしたらそれは、俺自身だ。俺が、自分の首を絞めているのだ。


…護ると誓ったあの日の自分に、なんて言えばいいのだろう。きっとあの日の俺が今の俺のことを知ったら、何をやっているんだと。決めたんじゃなかったのかよと罵ってくるだろう。あるいは、やっぱりそうなるよな、というように、落胆するように溜め息をつくかもしれない。どうでもいいことだった。


…土方さんの言う通り、そう時間は残されていない。討ち入りは来週の水曜日であり、数日後に迫っている。前日に『お前は明日戦場に立つんだ』なんていきなり突きつける訳にはいかない。決めるなら。伝えるなら、今のうちだ。


けれど。でも。


──俺は、どうしたらいい。


……しゃがみ込んで頭をぐしゃぐしゃにしてしまいたい衝動に駈られていれば。それでも早足に廊下を歩いていれば、俺は暗い廊下に差し込む月明かりを見つけた。うっすらと、白い光が闇を一ヶ所、四角く切り取っていて、その光を踏みつけるようにそこに立った。隣接されている真選組道場へと繋がる通路があるため、壁がそこだけ途切れていて、そこから月明かりが漏れていたのだった。道上と屯所は、ほんの数メートル離れた位置にある。離れのようなものだ。

その通路を見据える。その先には、道場の扉が見える。そして、俺は気付く。


……道場に、誰かが居る。

道場の扉はほんの少しだけ開いていて、その隙間から道場内の明かりがついているのが分かった。夜の9時を回っているというのに、自主稽古をしている奴が居るのか。なんて、物好きな奴なのだろう。そんなことを思いながら、俺は自動的に、道場へと向かっていった。


…そこに誰が居るのか、きっと俺は分かっていたのだ。

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