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どんな顔をするだろう 沖田side ページ7

…ひた、ひた、と。裸足の足で木製の床を踏みしめる音が微かに聞こえてくる。廊下は酷く静かで、人の気配も感じなくて、この世界に俺一人だけなのではないかというなんとも馬鹿げたことを思ったりしていた。けれど、屯所には隊士達が居て、近藤さんや終兄さん、土方さんに、Aも居て、俺一人きりなんてことは有り得ない。けれど、そんなことが信じられないくらいに、廊下には静寂が満ちていた。宛もなく歩いていき、隊士達の部屋がある通路とは違う場所に居るせいなのもあるだろう。いびきや寝言も聞こえないような場所に、俺は居た。何処に行きたいという訳ではないのに、足は止まらない。ひたすらに薄暗い廊下の奥にゆっくりと足を進めていく。

…あまりに静かだから、嫌でも意識が内側に向いていく。足元を見下ろしながら、俺はまた思考する。


…Aは言った。俺の隣で戦いたいのだと。自分だけが救われて、俺が傷付くのなら。仲間が傷付くのなら、何も嬉しくはないのだと。そんなことのために。護られるために、真選組に入ったのではないのだと。

…Aは、護りたいもののために、刀を握り締めて戦場に出ることを決意した。家族を、所属していた同じ道場の同門を。そして、その護りたいものの中には、どうやら俺も居るらしかった。ちゃっかり、いつの間にか、そんな所に俺は居たようで、それを知った俺は、堪らなく嬉しくなったのを覚えている。その時のことを思い出しては、小さく口角を上げていた。

こんなにもしんどいのに。キツい心持ちで居るのに、アイツのことを考えていると、どうしてかそういう瞬間がある。それほどまでに、俺にとってAは、愛しくて仕方がない存在で。


…何がなんでも、失いたくない、護りたいものだった。だからこそ、恐れは大きく膨らんでいく。


…あの時。Aがそう言ったあの時。俺は告げた。『護る』と。護るための覚悟を決めると。Aが俺のことを護るなら、俺もAを護るのだと。俺は確かにそう言ったし、そう決めた。それは揺るがない、強固な決意だったはずなのに。いざこうして向き合っていると、足が竦んでいけない。隣に並んで、対等になって、背中を護り護られていくんだと。そう思っていたのに、俺はまた、Aを後ろに隠したがっているのだ。


…傷付けたくないのなら。失いたくないのなら。遠ざけてしまえばいい。Aの意思を無視して、ワガママに護ってしまえばいい。けれど。


そんな俺を見て。後ろに引っ込まされたAは俺の背中を見て、どんな顔をするだろう。


……恐ろしくて想像も出来ない。

誰かが居る 沖田side→←得体の知れない不安 沖田side



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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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