【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

私がなれたら ページ27

弟の陽太を過激派攘夷浪士にさらわれて、奴等に仲間誰一人として告げ口をせず、たった一人で来いとの果たし状を受けて、無茶な賭けに出るように私が一人きりで剣を振り回したあの時。全身ボロボロになって、血塗れで、身体中が痛くて、敵が目の前で私に刀を振り落とそうとしているのに。死を。大事なものを救えないかもしれない可能性を目の前にしているのに、それが迫ってきているのに、身体が言うことを聞いてくれなくなってしまって。もうダメなのかもしれない。ここで終わってしまうのかもしれない。死んでしまうのかもしれない。今にも途切れそうな意識を必死に繋いで敵を最後の力で睨み付けながらそんなことを思っては、それでも負けたくない、死にたくないと叫ぶように願っていたとき。

…私の前に、彼が現れたのだ。今も私のことを真っ直ぐに見据えている、彼が。


ぐらりと傾いた私の身体を支えて、私に迫っていた死を一瞬にして何処かへと追いやって、そうして私の目の前に立ちはだかって、私を護るために、彼は剣を振るった。あの時の光景を。気を失う直前の景色を、鮮明に覚えている。あの時彼が来てくれなかったら、間違いなく私はここには存在しなかった。

あんなにも視界いっぱいに広がっていた絶望を、彼は瞬く間に覆した。私の前に堂々と立ったあの背中は、彼が振るった剣は、もうダメだと思っていた私を救ってくれた。彼は、私の中で、一番強い人だ。


…けれど、どんなに強い人でも、あんなにも強い人でも、傷だらけになって帰ってくることがあるのだ。彼は強いけれど、けれど今になって思い出してみると、自分を顧みない戦い方というか、自分を護ることすら忘れて戦っているように思えた。彼は文字通り、自身を削りながら戦場を駆けているのだ。

あの背中を。あの強い背中を、護る人が必要なのだ。彼がどんなに無茶をして暴れても、大丈夫だと思えるような、そんな剣が必要なのだ。


…その剣に、私がなれたらって。そう思うのだ。


「…あの病室で言ったこと、覚えてくれていますか」

「…あァ。覚えてるよ」

「私は、私の気持ちは、あの時から変わってませんよ」



『私は、今よりもっと強くなってみせます……だから、』
『…貴方の隣で、貴方を護らせてください』

大事なものを護るため。護りたいものを護るため、私は自分の手で、剣を振るいたい。そのために、強くなることを望んできたのだから。


「私は、貴方のことを護りたいんです」


貴方の背中を護るための、剣でありたいんです。

届かないのなら、聞こえないのなら→←いいことも、悪いことも

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す