【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

恨みっこなし ページ20

…彼の目が、大きく見開かれた。ポーカーフェイスを保つことを、その驚きを隠す努力を忘れてしまったかのように、ストレートに彼の驚きが伝わってくる。沖田隊長は何に対しても大抵は興味なさげで、反応も極端に薄い。彼の表情がここまで明らかに感情を乗せてくることは珍しいので、それだけのことを私はやらかしているのだなということを改めて理解していた。まぁ、自分が今とんでもないことを言い出していることは分かっているのだけれど、それはもう自覚しているけれど。それでも、この宣戦布告を、取り消しになんてするつもりはなかった。うまく言えないのなら、言葉ではなく実力で伝えるしかない。力ずくでねじ伏せるなんてことは考えていないけれど、それくらいの心構えは必要だった。

…それくらいしないと、やってのけないと、戦場で生き残れやしない。こんなところで、状況に、彼の表情に、怯んでなんていられない。足を竦めてなんていられない。私は私の意思で、固い決意でこの勝負を取り付け、まるで鉄の塊を握り締めるように竹刀を握るのだ。斬られれば死ぬ、それくらいの覚悟で。


沖田隊長は私を見据えたまま見開いていた目をゆっくりと戻していき、また飄々とした顔色になっていく。それでも、そこには確かにまだ、彼の中で生まれた衝撃や戸惑いが残っていて、それを無理に圧し殺そうとしているように見えた。

きっと沖田隊長は、私がしようとしていることを、正確に理解しただろう。


「…本気かィ」


静かな問い掛け。それに私は間髪いれずに頷いた。


「本気です」


沖田隊長相手に、冗談でこんなこと言えない。彼と勝負をして、私が勝ったら私のお願いを聞いてもらうなんて、そんな身の程を知らないような言葉は言えやしない。いつもの私なら、絶対に言い出さないだろう。けれど今の私は、いつもの私とは違うのだ。

私はゆっくりと歩きながら、続ける。やけに渇いてくる喉で。言葉が張り付きそうになりながらも。


「一回勝負です。勝っても負けても恨みっこなし」

「……じゃあ、」


彼の目の前に私の足が辿り着いたところで、沖田隊長は呟く。私が持っている竹刀を見てから、私へと視線を上げながら。

暴力的なまでの光が宿っているようなその目が、私を射抜くようだった。


「俺が勝ったら、俺の願いをお前が叶えてくれるんだねィ？」

「…そういうことです」


私がそんなルールを取り付けたんだ、彼にもその権利は与えられる。そうじゃないとフェアじゃない。私は小さく頷いて、彼に一本の竹刀を差し出した。

運動→←勝負

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す