波間のブルー(ss)二章完(移行へ) (ページ16)

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41you ページ16

男の人とこういう事をした最後は、もうずっと前。
彼は私の指導医だった。
尊敬する人だった。
人の命の価値は、手術台の上では同じ。
立場や肌の色、増してやお金なんかで左右される事が無い…
一番基本で決して忘れてはいけない大切な事も。
もちろん、技術も。
そして…女として。
彼は全てを私に教えてくれた。
…一生、尊敬する人のはずだった。

「あー…もう動けませーん」
「ふふ！さっきもそれ聞いた」
「動けないはずの俺をなぜか再び動かすのはお前だろ？」
「嘘！？よく言う！」
「はは！…あー…疲れた…」

翔は私を抱えたまま、ゆっくり息を整え始めた。
彼の呼吸と一緒に体が微かに上下する。
それほど、肌同士が密着したままだった。

「そんなに疲れちゃった？」
「疲れちゃった。けど…すげーイイ疲労感」
「うん。そう…」
「あー。すげー…良かったー」
「え？何が？」
「聞くな！感想だわ…感想」

私の胸元でボソボソ呟く。
こそばゆくて身を捩ると、逃げると思ったのか腕に力が入る。

「すげー良かった」
「もうー。それは分かったから」
「…だめだった？」

なんて甘い声なの。
…錯覚しそうになる。
私はこの人に本当に愛されているんじゃないかって…。

「すごく、良かった」

言い終わる前に唇が触れた。
また、すぐに水音が響く。
彼の呼吸が、私に重なる。
休む間も許されないほど誰かに求められるなんて…
こんな感覚、久々過ぎて。
…この温かい腕の中だと、本当に…錯覚したくなる。