少しくらい、俺のこと見てくれてもええんやで？【宮治】

手のひら ページ32

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Aside





ある日の日本史の授業。


予鈴が鳴って
カバンの中から教科書を取り出していると、隣から声をかけられた。





治「なぁ、教科書見せて。」



A「え、忘れたの？珍しい。」



治「ちゃうわ。侑に貸したら返ってこうへんかった。」



A「それはドンマイすぎるよ。」





いいよ、って言って
右側の席に座るの治寄りに教科書を開く。



するとすぐ
ガコン、って机と机をくっつけられて。


少しだけ、治との距離が近くなる。





……わ、なんか………





A「治って大きいね。」



治「え？デブ……？」



A「違うそっちじゃない。」





なんだろう……

部活で何度も顔は合わせてるけど、改めて思ったな。



こんな隣り合わせで座ることなんて、部活ではあまりないし。




部活の時は、マネージャーの仕事とか
みんなの練習模様見ることに気を取られてたからわかんなかったけど、
喉仏とか、骨ばった手とか。



そういうのが、





A「…男の子って感じ。」



治「……っ、」





ポツリと言ったひと言に
治は一瞬、少しだけ目を見開いた気がした。





治「なんや今さら。自分、俺が女とでも思てたん？」



A「まさか。」





あはは、と笑ってると
不意に治の腕が伸びてきて、左手を掴まれる。





A「え、？」





驚きながら治の方を見ると
彼は掴んだ私の左の手のひらを自分の右の手のひらと合わせて。



もちろん私の左手が治の右手の大きさに勝てるわけもなくて、
すっぽりと収まるその様子を見てふっ、と笑う治。





治「ちっさ。」



A「治の手が大きいだけでしょ…」



治「男と女の違いやな。」





何これ。


……何これ。





その後すぐ先生がやってきて、真面目っぽく前を向いた私たち。




少しだけ、…………少しだけね？



少しだけドキッとしたのは、
私だけの秘密。






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