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「ぎゃああああ! 治くん脚速すぎない!?」
「逃がさんで。観念せえや」
朝っぱらから鬼ごっこをしている様は、さぞ滑稽だろう。私が治くんから逃げおおせられるはずもなく、あっけなく捕まえられてしまう。どうしよう、目が合わせられない。
「ごめん、もしかしたら幻聴かもしれないよね? もう一回お願いできる?」
「せやから、好き。付き合うて?」
「……げ、」
幻聴じゃなかったぁああああああああああ!
絶叫が響く。走馬灯的に、目の前を数分前のことが駆け巡った。
朝、珍しく治くんが私のクラスまでやってきた。てっきり侑くんに用があるのかな、なんて思っていたら、手を握られる。理解が追い付かず、目を白黒させている私に、とんでもない爆弾が落とされたのだ。
「すき」
「ごめんなんて?」
「すき。付き合うてくれる?」
「待て待て待て待て」
こてん、と可愛らしく首を傾げる目の前の男の子は、間違いなく治くんだ。間違えようがない。え? じゃあ私は、治くんに告白されているのか。
一瞬遅れて状況を理解して、一気に顔が熱くなる。なのに頭の芯は冷えていく感覚があって、ざわつくクラスメイトの声や、「やりよったー!」と爆笑する侑くんのけたたましい笑い声がやけにはっきりと聞き取れた。
「ごめんなさい! 無理です!」
「なんで? 俺のこと、嫌いになったん?」
握られていた片手を苦労して開放する。下がった眉尻を見て、そんなことありえない、と慌てて否定しながら。
「あの……その、上手く言葉にできないんだけど、なんて言うか……」
しどろもどろになる私。視線をうろうろとさまよわせていると、にやにやしている侑くんと目が合った。助けて、という念は通じたのか、楽しそうに「無理!」と口パクで返ってきた。
「じゃあ問題ないやろ、付き合お」
いや問題大ありだわ。半ばやけくそで、勢いをつけて椅子から立ち上がる。こんな大声を出したのは、もしかしたらあのプロポーズ以来かもしれない。
「そう、そうだ! 私、治くんのこと好きだけど自分が好かれたらどうすればいいのかわかりません! でも相変わらずきみのことは大好きです! ごめんなさい!」
「……はぁ!?」
多分困惑したのは治くんだけじゃなくて、その場にいた全員だ。いたたまれなくなって、教室から飛び出した。
「待てや」
「うわああああ一人にさせて、落ち着いて考えさせてえええええええ!」
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか?あるようでしたらボード?にお願いします (2019年9月19日 7時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…( ; ; )本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー!好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです!治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです! (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ!!!めっちゃくちゃ好きです!!!番外編も嬉しいですありがとうございます!!治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです!満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください!お粗末さまでした! (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年8月9日 17時