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8話 ページ9

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「あ、れ…」


Aは知らない場所で目が覚めた

ちゃんとしたベッドで目覚めるのは何年ぶりだろうか




「ここどこ…」




後頭部がズキズキと痛むが、覚醒しきっていない頭を何とか回転させて意識を失う前のことを思い出す…

昨日は組織に仕事を与えられてターゲットの家に侵入して…それで…





「はっ…今何時!?」




窓ガラスから差し込む光は夜の月明かりとは違い、さんさんと照らす太陽のものへと変化していた
日の差し込む角度からして昼近くまでは経っているだろうから、アジトを出てから優に半日ほど過ぎていることになる





「どうしよう…!!!
お母さん、アールシ…!!!」




Aは勢いよくベッドから飛び起きた


常々“母親と妹はお前の働き一つで生きるも死ぬも決まる”
と組織に言われているからだ

私がアルハイゼンを連れて帰らなければ家族に被害が及ぶかもしれない





「うぅ…帰らなきゃ…」




Aはグラつく頭を推してサイドテーブルに手をつきながらやっとの思いで立ち上がると、胸元にメモ用紙が刺さっているのに気が付いた






「…“組織と家族の事は任せておけ”
“寝て待っていろ”


…どういうこと?」



何を任せろと言うのだ…
文が短すぎて、何も情報が汲み取れないメモに悪態をついた



だが、その文を読んだ瞬間
足が床に縫い付けられた様に動かなくなった






どうにかしてくれるの?





という希望を抱いてしまったのだ
希望は気の緩みへとつながってしまった

今まで四六時中張り詰めていたから自分の気持ちを見ない様に出来ていたが、緊張の糸が切れた瞬間もう一歩も動けなくなってしまった





「…信じていいの?」






パタリとベッドへ倒れ込む







「…神様…もう一度だけ信じさせて…」






あの隼のような彼が、私への吉報を持ち帰って来れる事を…





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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時

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