6話 ページ7
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「俺は知論派所属のアルハイゼンだ
君は年的に…Aか?」
「あってるわ」
どうやら既に私たち一族のことも調べ上げているらしい
と言う事は、巷に流れている一族の悪い噂も耳に入っているだろう
「残念ね、知識の冒涜をした人の一族が生き残っていたなんて」
そんな噂嘘だ
父が暗殺される時私は目の前に居たのだ
あの時必死で否定する父に、暗殺者と共にいたあの学者が
『君が死ねば丸く治るんだ、知識の糧となるのだから学者冥利に尽きるだろう?』
と嘲笑っていた声を今でも覚えている
口から出た言葉に、自分で言っておいて笑ってしまった
「俺はわかりやすい罠に引っかからない、と言っただろう」
そう言うとアルハイゼンはAを縛っていた縄を一つずつ解いていった
「どう…して?」
「アザールの失脚によって研究内容が明るみになり、現在は少しずつだが過去の出来事も解明されてきた」
「…それに俺はラメッシュと一度、砂漠に調査に行った事があるが彼があんな禁忌を冒す様な奴だとは思えず、当時から疑問だった」
まさかこの人は父の知人だったのは
それに父の潔白がやっと証明されるのか
ただ…
「もう…遅い」
「A?」
「もう遅いのよ…!
もう私はあの頃の私に戻れない程穢れた…!
それに母も妹も組織に掴まれてて、今更戻れないっ」
そう一気に捲し立てたAは目からは涙が溢れ、自由になった腕でアルハイゼンの胸ぐらを掴む
アルハイゼンに訴えても、過去が変わるわけでも母たちが助かるわけでも無いのに、感情がグチャグチャになりアルハイゼンに当たらなければおかしくなりそうだった
「何で今更なの!?
今まで何度神様に願っても何もしてくれなかったのに、何で今更神様はそんなことするの…
意味ない救いなんてしないでよ…」
目に大粒の涙を蓄えたAの瞳は、光が屈折しプリズムの様に光る
泣き喚くAに叩かれても揺すられても、アルハイゼンはただ無言でAからの訴えに耐えていた
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時