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43話 ページ44

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その日Aは夢を見た



ここはAが生まれた家だ


目の前には
あの時目の前で殺されたお父様も生きている
お母様も妹も笑いかけてくれている


大好きな家族に囲まれて、愛されて過ごしていた遠い日の夢



「ーーーーー!」


思わず目に涙が溜まっていくのを感じながら家族の元へと駆け寄る


が、目の前の映像は一瞬で砂の様に崩れて、Aは一人真っ暗な組織のあの部屋で立っていた



(あぁわかってるのに…)



(もうあの幸せな風景は無いのだと
私にはこの黒い服と真っ暗なこの部屋しかないのだと…)




(なんて残酷なんだ)




(お母様たちを生かすために仕事をしなきゃ)





Aが鏡の前に立ち、顔を隠すヴェールをかけると
どこからか突風が吹きヴェールで顔を隠す事を許さず、Aは思わず目を瞑る







(あれは…隼?)




恐る恐る目を開けると部屋にはおらず、どこか暗い空間にいた
暗いはずなのにハッキリと見える遠くから近づいてくるその鳥に目を奪われた

その隼は他のものに目もくれず一直線にAの元へと降りてきて、その鋭い鉤爪でAの肌を傷つけぬ様に気遣っているのか、えらくゆっくりにソッと手首に着地した





(どこかで…)



Aはその隼に其処はかとなく懐かしさと安堵を感じている自分に驚いた

その間も隼がジッとAの目を見続けてくるので、頭を優しく撫でると何とも満足そうに目を細めた




(こんなリラックスしたのはいつぶりだろうか…)




Aが手を止めると満足したのか羽を広げて飛び立つと、少し先を旋回し出した




(ついて来い、てことかしら)



Aが隼の後を追い足を進めると正解だったのかまたもう少し先を旋回し出した




(待ってっ)




Aは置いていかれぬ様、必死で脚を動かして進む、が

足元はまるで泥の様に重くAにへばり付いてくる





(苦しい…怖い…)

(これ以上進めない…)




脚をもつれさせて転けてしまうと、今まで前を飛んでいた隼がスルリと肩に留まりAの目元に頭を擦り寄らせた




(慰めてくれるの?)



Aがそう感じた瞬間、今まで脚に絡みついていた泥は驚くほど軽くなり、Aの心を支配していた恐怖も薄れた





(大丈夫、進むよ…)




隼の視線の先へと脚を進める





(ありがとう…)



(アルハイゼン)





Aは気付くと光のなかへと戻っていた




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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時

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