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42話 ページ43

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「最近、お仕事忙しいみたいだね」



今は帰宅したアルハイゼンにいつもの様にコーヒーを振る舞い、二人でゆっくりくつろいでいる




あれから当時と比べて私の精神状態も少しは落ち着いてきたからか、一日中布団に包まって本を読んでアルハイゼンの帰りまで時間を潰す生活からは抜け出し、前の様に家の掃除や朝食くらいは作れる様にまで回復した

と言ってもまだ外に出る事は無理で、アルハイゼンにメモを渡してお使いをしてもらった食材でやりくりしている

お使いを頼むのは心苦しいが、何もしないでただ家に居るだけでは腐る一方なので少しだけでも役割を果たす事を選択した





「少し立て込んでいるんだ、すまない」

「謝らないでっ
私が我儘言ってる自覚はあるから…」


「ふ、俺も君の側から離れたくないから、気にするな」


「…ありがとう」




こんな甘い会話をしているのに交際をしていないと言うんだから、随分とおかしな関係になっていると思う


これじゃあ最初に危惧していた惚れた弱みに漬け込んでいる様なものだ



ただ、その事をアルハイゼンに謝る度に



“俺がしたいと思うからしているだけだ”

“あの時俺の元から離れる選択肢を取ろうとしていたのに、それを許さなかったのは俺でもある”

“君はそう自分を卑下するが、逆に弱った君につけ入る様な真似をしているのも俺だ”



“それにこんな弱っているAに好きだと言われても、本意かもお互いわからないしな”

“早く心からの好意をAの口から聞くためだ”





と、何とも殺し文句の様な破壊力のある返事がいつも返ってくるのだ…


自分でも確かに今の精神状態では、依存先としてアルハイゼンを好きなのか、ちゃんとアルハイゼン自身を好きなのかの判断に自信が持てない

そんな状態で好意を伝えるのは実に不誠実だと思うから、今はその事は言わないでいるし、アルハイゼンも一度も催促してきた事はない





「私、絶対立ち直るから…」


「楽しみにしている」



優しく頬を撫でる手に擦り寄る

今は後少しだけ、
この大きく優しい手に身を委ねておこう…



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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時

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