35話 ページ36
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「ここだ」
少しの間ウィンドウショッピングを楽しんだのちに、洋服店の前でアルハイゼンが立ち止まった
ドアをアルハイゼンが開き押さえてくれているので、そそくさとお店の中に入る
店員さんがドア開ける様な別格の高級店ではなくて良かった…
じゃなければ今の自分の格好は門前払いされていただろう
ただ、小さい頃からいいものに囲まれていたので物の良し悪しはわかるつもりだ
今着ている服も安い割に生地やデザインが良いものを選んで買ったので、なんとかこう言うお店でも浮くことはないだろう
「今日はAへのお詫びに来たんだ
好きなだけ買ってくれ」
「ありがたいけれど、私の性格も知ってるでしょ」
「だから詫びに来たと付けた
俺に詫びるチャンスを与えないつもりか？」
「うっ、良く頭が回りますね
じゃあ気に入ったものがあればお願いしようかな」
「ああ、ゆっくり見るといい」
ゆっくり見ればいいと言うけれど、どうせその間はお店のソファーに座り本でも読んでいるのだろと思っていたのだが…
アルハイゼンは意外にも私が見ている間隣に立ち、一緒に見ていてくれた
店員さんもそれを見て営業しに来るのをやめてくれた様で流石高級店ってだけはある
「この色どう思う…？」
「なぜさっきから暗い色を選ぶ」
「なんとなく？」
「君は明るい色やもっと綺麗な色の方が似合うだろう」
本当はアルハイゼンが言う様に明るい色の方が似合うので昔はよく着ていたのだけど、今は目立ちたくなくてどうしても無難な色に言ってしまう…
ただアルハイゼンの合格が出るものは実際自分に合っており、アルハイゼンから見た自分と自分の認識が合っている様で少し安心した
「あれ…A様…？」
アルハイゼンが用を足しに少し席を外していると、不意に後ろから声をかけられた
“様”なんてつけるのは昔の知り合いしかいない
恐る恐る振り返ると、そこには前に家に服を売りにきていた人物がいた
家に来たことは一度しか無かったが、好みの服が多かったので良く覚えていたのだ
「…え、亡くなったと…」
まるで恐ろしい魔物でも見ているような、幻を見ている様に瞳に怯えた表情を映している店員に、Aは一瞬で身体を強張らせた
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作者名：みずと | 作成日時：2023年7月5日 3時
