33話 ページ34
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あの後、Aはまるで自制の効かないリシュボラン虎のようなアルハイゼンに体勢を変え場所を変え、幾度となく感情のぶつけどころとして身体を使われた
「すまなかった」
上から降ってきた声に、なんだかデジャヴを感じてしまう
あの時は私が早とちりをして行動した結果逆に謝らせてしまっただけだったけど
「…本当にひどいです」
酸欠で頭はぼうっとするし全身の筋肉も悲鳴を上げてる
そんな体に鞭を打ち、上半身を起こして自分の体を見てみると、最初に掴まれた手首は赤く痕が付いていたし
首筋なども見たら沢山痕がついているんだろう…
それにちゃんと脱がせてもらえなかった服はべとりと濡れている上に見るも無惨にグシャグシャに皺が寄っていた
「この服…アルハイゼンにプレゼントしてもらったやつだから、大事にしたかったのに…」
光の中に戻ってきてから初めてのプレゼント
自分は黒がお似合いと卑下していたのに、あの時アルハイゼンは真っ直ぐと“白が似合う”と断言して安心させてくれた、そんな思い入れのある白いワンピースだ
「待ってって言ったのに…
全く聞く耳持たないんだもの」
「そんな気に入っているとは…
服はまた同じものを買ってくる」
「そういう事じゃないよ
新調したり洗えばいいって話じゃない
私に非があるとはいえ、怒りに任せて同意も無く身体を使われるのは間違っても気分のいいものじゃない
そんな状態でこの“大切な思い出”がグシャグシャになったのがすごく悲しいの」
「……すまない
一般的にこういう場合思い入れを大事にする事が抜けていた」
「…私もアルハイゼンの気持ち考えない発言だったしあまりアルハイゼンの事責められない、ごめんなさい
それでも、感情に任せてこんな乱暴する前にちゃんと話を聞いて欲しかったよ?」
「自分の制御も出来ないとは俺もまだ未熟だな」
いつもの横柄な態度はどこへやら
珍しく素直に自分の非を認めた彼に少し肩透かしを食い、なんだかこれ以上責める気も起きなかった
「…このワンピースのデザイン凄く好きだから…
今度の休みお店に連れて行ってくれたら許す…」
だからと言ってすぐ今まで通り接するのも癪なので、少し大袈裟に口を尖らせながらアピールをする
「!
あぁもちろん」
顔色が一瞬で変わり、表情はあまり動かなくともアルハイゼンが大層嬉しそうなのはよくわかる
なんだかそんな彼がすごく可愛く思えてしまった
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時