30話 ページ31
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「最近、君は随分とカーヴェと仲が良いようだな」
夜、普段ならもう寝室に入っているアルハイゼンが今日はやけにリビングに長居しているなぁと思っていると
急に名前を呼ばれソファーに座るように促された
「そうかなぁ?
最初からあんな感じだった気がするけれど」
カーヴェはアルハイゼンと違って自分からもよく喋ってくれて娯楽の少ないAにとっては、カーヴェとの会話は結構好きな時間でもあった
少々カーヴェには失礼だが同性の友達がいたらこんな感じだったのかなと思う
「君たちが元々無駄話が好きで話していることは知っているが、最近輪をかけて二人で会話をしているように思える」
「無駄話ってひどいなぁ」
確かにアルハイゼンのような人にとっては無駄な話なのかもしれないが、Aにとっては楽しい時間だ
それに世間知らずを自覚しているAにとってはカーヴェの話はいろんな事を知れて大いに価値のあるものだった
「あ、でも私が働き出したら二人でルームシェアしようかって話が上がったからそれでかも?」
「…二人で?
君とカーヴェが?」
「うん、二人ともお金ないけど折半だったらお家借りれるよねって話しててそれもありかなって…」
アルハイゼンには金銭面でも援助してもらっているのでここを出て行けばお金を返すのが遅れてしまいはするが、多くの場合家はその人にとって最も安心できる城を望んでいる
そこに他人がいつまでも居座り続けるのはよろしくないだろう
よくカーヴェに対して嫌そうにしているし、本来は静かに本を読んでいたいのかもしれない
「…君は優秀な頭脳を持っていると思っていたんだがな」
「え?」
ズキリと手首が痛み目線を下げるとアルハイゼンの手が自分の手首を強く握っていた
「いたっ…アルハイゼン、痛い」
そう訴えてみたが彼の手は一向に緩まる気配がなく
Aが目線をまたアルハイゼンに戻してみると、怒気を含んだ冷たい目をしていた
「アル、ハイゼン…?」
「柄にもなく相手の出方を伺って君から好意を寄せてもらうのを待っていたが、無駄だったようだな」
冷たくて少し悲しみを帯びた声でそうAに吐き捨てると、アルハイゼンは乱暴にAを自分の腕の中へと引き込んだ
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時