27話 ページ28
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「何か仕事をください…!!!」
あれから数日経ち、私はただ家で本を読んでただただ時間を潰す毎日だった
アルハイゼンは相変わらず特段積極的に関わってくるわけではなく、付かず離れずの関係をしている
カーヴェとも顔を合わせればお話しはするが家にいることも少ないようで、ただただ手持ち無沙汰な日々を過ごして、私が引き受けた仕事といえば酔い潰れたカーヴェのお世話くらいなものだ
居候の身なので勝手に家事をするのも図々しい気がしていたが、ただ居候で過ごしているのも申し訳ないので、アルハイゼンに“何か手伝うことある?”と聞いたが、“特にない”と返されてしまっている…
ウジウジしている事はやめたAだったが、やはり役に立ちたい気持ちはあるので堪忍袋の尾が切れたAは今日こそはとアルハイゼンに詰め寄っていた
「…君は少し人との距離感を学習した方がいいのでは?」
「ん?」
本を読むアルハイゼンはこちらが声をかけてもなかなか顔をこちらに向ける事はない
なのでちゃんとこっちに注目して欲しくて勢いに任せてアルハイゼンに迫ったせいか、アルハイゼンとAの顔の距離は相当近くなっていた
「あっちがっ…だってアルハイゼン全然こっち見てくれないから…!」
慌てて離れようとすると、その腰を逃さないようにアルハイゼンの手が押さえ込んだ
「あの、離れられないよ?」
「見てほしいのだろう?
これならしっかりとAの顔が見える」
「うっ…そう言うことじゃなくて…」
恥ずかしさのあまりしどろもどろになっているAを見て満足したのか、アルハイゼンはパッと手を離した
「もう…意地悪しないでよ…」
自分の顔面が整っていることを自覚しているのだろうか…
こんな事されて平然といられる女性などいるはずがない
いや…アルハイゼンのことだ、整っている事も上手く使っているのかもしれない
意地悪だ…
「君の顔を見ていると百面相のようで飽きないな」
「誰のせいだと思ってるの…」
「さあな」
絶対わかってるくせに…
今後この男のペースを崩す事が果たして出来るのだろうか…
「普通惚れた弱みって言わない?」
「あいにく弱みなど持ち合わせていない」
「んーーー!!!絶対いつか振り回してあげるから…!」
「ふ、楽しみにしている」
果たしてその目標は達成できるのか…
目の前の余裕そうな彼を見ていると気が遠くなるのであった
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時