26話 ページ27
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一夜明け、Aはアルハイゼンが仕事に行った後
日用品を揃える為にスメールシティへと出向いていた
朝のうちに今日の予定をアルハイゼンには申告してあるから大丈夫であろう
とりあえずアルハイゼンがワンピースをプレゼントしてくれたおかげで出かけるための服は手に入ったが、それ以外は何もない状態なので色々買う予定だ
自分のお金じゃないところが心苦しいが、だからと言っていつまでもワンピース一着でいるわけにもいかない
今は有り難く使わせてもらい、自分で稼げるようになったら少しずつでも返していこうと気持ちを切り替えた
「さて、どうしたものか…」
買い物をしに意気揚々と繰り出したは良いが、組織では渡されたものを着ていただけだし、昔は商人が直接家に来て選んだら後は使用人が払ってくれていたので初めてのお使い状態だった
「んー…まあなんとかなるでしょ!
とりあえず洋服を数着…
最低限のケア用品…
後は…
あれ、アルハイゼン?」
Aが事前に箇条書きにしたメモを眺めていると、前方から見知った顔が近づいてきた
「どしたの?
今は仕事中じゃないの?」
「今は昼休憩中だ
それに決まった時間に決まった場所にいると、際限なく無駄な仕事が舞い込んでくるからな」
「そうなんだ…」
下についている人は大変そうだなぁ…
「買い物は今からか」
「うん、メモに書いてきたからこれ通り買えば足りると思う」
「俺も同行しよう」
「嬉しい!
買い物の仕方わかんなくてさ…正直助かる…!!」
「…君のご両親は随分と過保護に育てたようだな」
「かも?
お恥ずかしながら今まで値段気にしたことって無かったし相場が全くわからないのよ
でもこれからは私も頑張って覚えていかなきゃね」
これからは今までの感覚は捨てて自分のことは自分でお世話しないといけないからだ
よく貧乏から贅沢には一瞬で慣れるが、その逆はなかなか慣れないと言う
ただAの場合、皮肉なことに地獄はもう強制的に経験したのでそこの問題もなんとかなるだろう
「別に今後も気にせず俺の金を使えば良い」
「家族でも無いのにそうはいかないよぉ…」
「ふむ…それもいいな」
「ん?何が?」
「ふ、なんでも無い」
何がいいのかわからないが、普段無表情のアルハイゼンが少し楽しそうに見えたのは、少しずつ彼を理解出来るようになったのだろうか
それだったらいいなぁ
と少しAも楽しくなった
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時