24話 ページ25
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家に帰る前にAたちは外で夕飯をとっていた
こう言うバーなどは初めて入る領域で、ガヤガヤと繁盛している店内では誰もが他人を気にすることもなく、Aにとっては都合が良かった
「あのアルハイゼン」
「なんだ」
「家族の事まで、お金の工面ありがとうございます…」
「あのくらいどうと言うことはない
生憎金には困ってないからな」
さもありなんのように言う彼は確かに正直者なのだろう
人によってはもしかしたらアルハイゼンのこう言うところも苦手と挙げるかもしれないが
今のAにとってはオブラートに包まない彼の言葉はわかりやすく、助かっていた
「ん、それでも私にとっては凄くありがたい話だから、感謝させて欲しいんです」
「前にも言ったが俺は自己犠牲をしてまで他人に手をかけるような馬鹿ではないからな。利があると思ったからしたまでだ」
利とはなんだろう…
とAが首を傾げると
「君が喜んでくれるだろう?」
フッと笑いこちらをしっかりと見つめてくるアルハイゼンと視線がぶつかり心臓が跳ねた
「あ、あ〜!えと…昨日の夜のことだけど…!」
どうしてもその視線がむず痒くて必死に話題を変えようとしたが、どう考えても話題選択をミスった気がする
「えと…アルハイゼンは本当に一目惚れ…したんですか?」
「あぁ、今でもその気持ちに偽りはない」
「…それって私のことが好きってことでいいんですか」
自分で言ってて恥ずかしくなる…
だがAも今まで“恋愛”というものを経験したことがないので、いちいち確認しないとわからなかった
「ふむ…一般的には一目惚れは好きと同等で合っているのだろう
それに今日君がティナリと仲睦まじく会話をしている所を試しに観察してみたが、少なからず焦燥感を感じた
あの感情は独占欲や嫉妬心で間違い無いだろう」
「あの時はそんな嫉妬する様な会話はしていないです…むしろ笑われていたような…」
「だとしても彼とはもう少しフランクに話しているように感じる」
「それは、もちろんティナリにも感謝はしているけど
それ以上に私にとってアルハイゼンは恩義があるから、そう易々とフレンドリーに接せれないというか…」
「ではその恩義がある俺が君とフレンドリー話したいと思っていると考えてくれ」
「うっ…わかっ…“た”」
絞り出した言葉に満足したのか、アルハイゼンは少し微笑むとまた食事へと興味を移していった
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時