21話 ページ22
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「おはよう…ございます」
「あぁおはようA」
あの後、アルハイゼンにいきなり“一目惚れ”したと告げられAは逃げる様に部屋を後にした
だってあの時はもう自分の感情に振り回されすぎて、アルハイゼンのまっすぐな言葉に怖気付いて情緒が不安定だったんだもの…!
一目散で寝床として借りたソファーにダイブした後も、アルハイゼンが伝えてきた言葉が頭の中をぐるぐると飛び回り、ついに朝まで寝付く事はなかった
そうして睡眠欲求が限界を迎えいつの間にか寝ていたらしく、起きた時のはお昼過ぎ
流石にこんな時間だしアルハイゼンも仕事に行っただろうとたかを括りリビングに行くと
「随分と遅い起床だな」
「あ…はは」
優雅にコーヒー片手にいつも通り本を読むアルハイゼンと出会した
「あー…アルハイゼンは今日はお仕事じゃないんですね」
「今日は君をガンダルヴァー村まで送り届ける手筈だったんだがな」
そうだった…!!!
後遺症などがないかもう一度ティナリに診察を受けるのと、家族に会いに行く予定だった
アルハイゼンに報告義務だけ済ませたら一人で行くつもりだったので、着いてきてくれるつもりだった事は初めて知った
「着いてきてくれるつもりだったの?」
「ちょうど別件でティナリに用事があったついでだ」
「そっか…」
自分の為にと一瞬思ってしまい、昨日のこともあって自惚れている自分に少し恥ずかしさを覚える…
それに比べて相変わらずアルハイゼンは何もなかったかの様に接してくるので、ここ数日何回目かの“実は夢なのでは”疑惑が頭をよぎった
「A」
「ん?」
「そこの袋を見てくれ」
そこと目配せされた方を見ると一つ紙袋があった
Aがその袋を持ち中身を取り出すと
「…洋服?」
「あぁ、まだ必要なものを買いに行けていないからな
寝巻きは俺の服でいいが、その黒い服のまま外に出るのはやめた方がいいだろう」
服を広げると白いワンピースで、シンプルに見えるが綺麗な刺繍が散りばめられており一目見て上質な品だとわかる
今の私とは正反対の“綺麗な白”…
「君には黒よりも白の方がよく似合う」
白い服なんてもう一生着る事はないと思っていたのに…
「ありがとう…!」
Aは大事そうにぎゅっとその白いワンピースを抱きしめ、少し優しい目をしたアルハイゼンに微笑み返した
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時