20話 ページ21
.
胸が張り裂けそうだった
行為中も終わった後も“役に立てた”と自分で自分を納得させていた筈なのに、アルハイゼンの口から音として自分の行った事を突きつけられた時
悔しくて恥ずかしくて、涙が嘘みたいに溢れた
「分からないっ
どうすれば、私は役に立てるのっ」
なんて身勝手なんだ
自分で誘っておいて、いざそれを言われたら泣くなんて
身勝手にも程がある
そんな自分にも苛立ちを覚えて余計に涙が出た
「…すまなかった」
とさりとAが座るベットが軋むのを感じ顔を上げると、何ともバツが悪そうなアルハイゼンが座ってこちらを見ていた
「…なんであなたが、謝るんですか」
「君の境遇を考慮すれば今の君がまともな思考をしていない事は分かりきった事だった」
「まとっ…！？」
“まともです！”
と言おうとして口を継ぐんだ
確かに会ってすぐの人を誘うなど、まともではないな…と
「だが君に興味を持ったのは事実だ」
「…私にはそんな興味を持ってもらう様な価値ないです」
「何を言っている
俺は出会ったあの夜から君に関心がある」
「へ？」
「君は俺が善意で助けたと思っている様だが、生憎カーヴェの様な見ず知らずの他人に自己犠牲を払ってかける熱意は俺には持ち合わせていない」
Aはますます分からなくなっていた
「善意じゃないのなら、それこそ私に時間を割く意味が見出せない…」
「ふむ…
自分でも意外だったのだが、俺は君に一目惚れをしたらしい」
「？」
言っている事に頭が追いつかない
“一目惚れ”つまり私に好意を持っているという事？
私が全くもってアルハイゼンの言いたい事がまだ理解できていないのだと察したのか、至ってからかっている様子もなく真面目に話を続けた
「そうだな…
初めは君が裏稼業の人間の割に難解な本を理解していた事から興味を持った
そして月明かりの下で君の目は幾重にも光が反射して思わず見とれてしまうほど美しかった
それに今さっき君を抱いてみて、俺は自分が思うよりも君を特別に感じている様だ」
アルハイゼンは恥ずかしげもなく、淡々と状況整理の様に語る
それとは真逆でAは、真っ赤に顔をして固まっていた
「まだ理解できない様なら続けるが、先ほどの君の瞳は非常に性的興奮をおぼえ…」
「あああ！ストップ…！！！」
あまりにデリカシーのないセリフにAは思わず枕をアルハイゼンの顔面へぶつけた
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みずと | 作成日時：2023年7月5日 3時
