17話 ページ18
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その夜、Aはなかなか寝付けずにいた
日中はティナリから二、三日は外出禁止と言われたので日用品を買いに行くわけにもいかず、アルハイゼンから本を借りてただページをめくって時間を潰した
本を読んでいる時は色々考え事をしないで済むので今のAにとってはありがたかった
朝カーヴェと鉢合わせた時
やはりというか、カーヴェに話は通されておらず事情を説明するとアルハイゼンに何か何か言いたげではあったがAの事は快諾してくれた
“あいつはほんと性格捻じ曲がってるから注意したほうがいい!”
なんて言っていたが…
気難しいタイプという事であれば同意だ
もしかしたらあそこまでの頭の良さになると一般人には彼の頭の中は理解できないのかもしれない…
今は深夜と言うのに借りた本もすぐ読破してしまったが無断で借りるわけにもいかず、Aはただ布団に包まりぐるぐると思考を巡らせていた
昼間アルハイゼンに“何故そんなにも良くしてくれるのか”と問い掛けたが満足のいく答えが返ってこず、Aはその事ばかり考えていた
父親と知り合いってだけで手を差し伸べてくれるなんて、そんな上手い話があるのだろうか…
見返りのない親切など、信じて今まで痛い目を受けてきたじゃないか
“君に興味を持ったから”
本当に彼は私に興味があるからだけなのだろうか
そうだとしたら……
そこまで考えると、Aは暗い記憶が蘇り唇をギュッと噛み締めた
「大丈夫…」
私にはもうこれしか返せるものが無い
意を決したAは重たい身体をベッドからずるりと引きずり出し、書斎を後にするとアルハイゼンの寝室へ続く廊下を静かに進んだ
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作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時