14話 ページ15
.
「お前がAか」
「…はい」
Aは今、借りてきた猫の様に固まっていた
昨日は本当に色々な事がありアルハイゼンから事の顛末を聞いた後ソファーを借りて泥の様に眠った
そして起きてみたらアルハイゼンの家にはこのスメールで目をつけられたら最後と言われる大マハマトラが佇んでいた
「とりあえず組織の方は今回の件の尋問は粗方済ませた
過去の罪状は今後もう少し時間をかけて暴いていく流れだ」
「…はい」
まだ自分の事は何も言われてないのに緊張で喉が詰まり息苦しさを感じた
テーブルの迎えに座る彼は自分と同年代かそれより下の様に見えるのに、それほど目の前にいる大マハマトラの鋭い視線がAに容赦なく突き刺さっているのだ
「そしてお前についてだが」
ついにきた
「お前は人を殺めた事はあるか?」
「誓って無いです…!
ですが今回の様に私が誘拐した事によってその後殺害される事はありました…
それに裏取引などの護衛などもしました…」
組織には神の目持ちがAしかいなかった
その為Aを死ぬまでこき使うつもりだったのか、精神が焼き切れぬ様に人殺しだけはさせなかった
なのでいつも戦闘が必要な場面などのみだった
だがAは元から自分の罪を隠すつもりはない
Aに喉がゴクリと鳴った
「ふっ…そう緊張するな」
「え?」
先ほどまでの気迫が消え、少しおかしそうに笑う顔が見えた
「お前が嘘を言っているようには見えないから今の話は本当なのだろう
アザールの件は直接関わったもの以外は経緯などを考慮してもとより罪を軽くしている
それにお前はどちら側かと言えば被害者側だ
無罪とは言えないがアルハイゼンの話を聞くに十分情状酌量の余地はある」
チラリとアルハイゼンを見ると素知らぬ顔で本を読んでいるが約束通り大マハマトラに助言をしていてくれたらしい
「ご厚情感謝いたします…」
自分も同じ様に罰せられると思っていたAにとって思いもよらないまさかの結果で呆気に取られていた
「なんだ?
罪が重い方が良かったか?」
「い、いえ!!そんな事ないです…」
「ふ、冗談だ」
「あはは…」
そう言ってクスッと笑う目の前の大マハマトラは世間が思う様な恐ろしい怪物ではなく
本当は年齢相応の人なのかもしれない
自分としては緊張していただけに気持ちがついていけず、乾いた笑いが出てしまった…
.
136人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みずと | 作成日時:2023年7月5日 3時