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Aには屋上にでも避難するよう伝え、ヒートアップした生徒の沈静に勤しんだ。
「はいはいもう良いだろ、昼休み終わっちまうよ」
答えられるある程度の質問に答え、漸く落ち着いてきた所そう言うと生徒達は大人しく職員室を出て行った。
「はぁーーーッ」
「大変だったな」
「見てたなら助けて欲しかったな、全蔵先生?」
「彼女持ちの定めだ」
「嫉みかよ」
隣の席の全蔵は笑っていたが、銀八は再び溜息を吐き出すと彼女が待つ屋上へと向かった。
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屋上の扉を開くと風が正面から吹き込んで思わず目を細めた。
銀八に言われやってきた屋上には一人だけ先客が居り、Aはそっと近付いた。
「銀八は他の生徒から質問攻めにあってるらしいな?」
学ランの中に赤いシャツを着たその人は振り返り、柵に背を向けそう言った。
『そうなの、だから暇してて… 晋助、相手になってくれる?』
「嗚呼、良いぜ」
“晋助”と呼ばれた彼はニヒルに笑うとそう言った。
彼…高杉晋助と知り合ったのは銀八の紹介だった。
昔通っていた剣道場に彼も居て、良きライバルなのだろう(本人は言わないが)。
そうでなければAに紹介などしない。
「弁当を届けに来たんだって? ご苦労なこった」
『持っていく準備だけして忘れて行っちゃうんだもの』
「俺にも作ってくれ」
そんな事を言われるとは思っておらず、Aは驚いた顔をしたが直ぐに言葉を返した。
『タダでとはいかないなぁ、…そうね、そのポケットに入ってる煙草くれたら良いよ』
指差すのは学ランのポケットで、今度は高杉が驚いた顔をする。
そして、指摘されたポケットから煙草を取り出すとそのままAに渡した。
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作者名:アカツキ | 作成日時:2024年1月14日 0時