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「んじゃ俺もう出るから!」

『んー...』

「ちゃんと起きなさいよ」

『ん』

「行ってきます」




慌ただしく家を出て行く銀八を寝ぼけた状態で送り出した。
Aはまだもぞもぞと布団から出れず、ダンゴムシのように丸まって数分。
彼に言われたようにゆっくりと起き上がり、肩から離れ難いとでもいうようにズルりとブランケットを落とした。





『......ん、?』




目を擦りながらリビングへ移動すると机の上にはランチクロスに包まれた弁当箱がある。
これは昨夜Aが作り、持っていくようにと言っていたものだ。
置きっぱなしなのを見る限り、持っていく準備だけして忘れて行ってしまったのだろう。




うっかりさんめ。





『仕方ない』






時計を見ればまだまだお昼までには時間がある。






『(やる事やったら持って行ってあげよう)』






Aは朝食の準備とやらなくてはいけない家事に取り掛かった。



.




.




.




銀八の職場を訪問するのは初めてだ。
Aは校門前に到着するとその大きさに圧倒され立ち尽くしていた。





「どうしましたか?」





門の警備員だろうか、カッチリとした制服を着こなすおじさんに声を掛けられ事情を説明する。






『銀八… 坂田先生の忘れ物を届けに来ました』



「あぁ! 坂田先生の! そうしたら入校許可証を発行しますので…これに記入を」






慣れた手付きで手続きを始めるおじさんに従い、名前や連絡先を記入する。






「職員室へは職員玄関に行くのが早いので案内しますよ」

『良いんですか?』

「勿論です、こちらへ」






校庭には体育の授業を行う生徒達と先生の姿があった。
時折教室のドア窓から見える生徒と目が合い、軽く会釈だけして通り過ぎた。






「職員室は此方です」

『ご丁寧に、本当に助かりました』

「いえいえ、坂田先生もこんな素敵な女性と知り合いだなんて隅に置けないな」





「はははっ」と豪快に笑うものだから此方も釣られて小さく笑う。




おじさんは他の事務員さんに事の説明すると引き継ぎを終え、職務へ戻って行った。







「坂田先生は只今授業中ですので、此方で少しお待ちください」

『突然すいません…』

「いえいえ、折角なら授業覗いて行かれます?」

『…あー…怒られそうなのでやめておきます』







そう言うと事務員さんは驚いた顔をして笑った。







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作者名:アカツキ | 作成日時:2024年1月14日 0時

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