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「よォ、A」
夜、仕事から帰る途中低い声に呼び止められた。
Aの名前を呼んだ正体は高杉で、学ランを小脇に抱えて腕まくりをしている。
「これから帰りかァ?」
『そうよ』
自然と並んで歩く二人は何でも無いような会話をする。
「そういやそろそろ誕生日だってな?」
『良く知ってるね? さては銀八から何か言われた?』
「いや、クラスの奴が面白ェ話をしててなァ?」
面白い話?
Aは首を傾げた。
高杉はその話を思い出しクスクスと笑いながら話をする。
「「Aは薔薇みてェな女」なんだってよ」
『薔薇? 何それ』
「ｸｸｯ、銀八がクラスの奴にそう言ったんだとよ」
Aは驚き目を見開いた。
銀八がそんなことを言うなんて…、いや、思っていたなんて。
『薔薇かぁ』
「ピッタリじゃねぇか」
『そう思う?』
「嗚呼、銀八にしては的を得てる」
『ふふ、彼一応、現国教師なんでしょう?』
Aの言葉に高杉は小さく笑った。
「そう簡単に触れられねぇ、棘がある所なんか言い得て妙だと思うがなァ?」
『……』
「…どうした?」
黙り込むAに先ほどまで笑っていた高杉は真剣な顔付きで問う。
『いや、この前銀八に変なこと言っちゃって』
「変な事?」
『…やっぱり何でも無い、じゃ私こっちだから』
パッと顔を上げるAの表情に高杉はそれ以上聞く事が出来なかった。
『もう遅いし晋助も気を付けて帰るんだよ』
夜遊びも程々にね、なんて言い去って行く彼女をただただ見送る。
「……ほらな、薔薇みてぇな女だ」
遠くなり小さく見えるAに高杉はそうぽつりと独り言を零しては同じく帰路へと向かった。
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作者名：ｱｶﾂｷ
| 作成日時：2024年1月14日 0時
