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「…せい、坂田先生」
「あ、はい」
ボーッとしている所を呼ばれ目を向ける。
「これ、今度の資料なんで目を通しておいてください」
分厚くファイリングされた紙の束を受け取りながら朝の事を思い出していた。
今日1日ボーッとしてしまうのはどう考えても”アレ”が原因である。
「(まさか行ってらっしゃのキスをされるとは…)」
彼女であるAと同棲を始めてかなりの月日が経ったが始めてのことだった。
照れる様子も見せず、不意打ちであんなことをしてくるなんて彼女の気紛れに過ぎないだろう。
「はぁーーー…」
本当にどうしてやろうか。
銀八は手のひらで顔を覆い深い溜息を吐いた。
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「起立、礼ー」
クラス委員の号令に20人近くの生徒が一斉に解散し始める。
一部は部活動に向かい、一部は帰りの支度を済ませ教室を出て行った。
銀八もまた名簿ファイルを閉じ小脇に挟むと教室を出ようとすると「銀八ー!」と名前を呼ばれた。
「”先生”な。はいはい何ですか」
「先生の初恋教えて」
「は? なに急に… 恋バナなら他当たってくんない…?」
女生徒の突然の質問に思わず眉間に皺を寄せ怪訝そうにそう言い返すと他にも興味を示した生徒達が数名集まってきた。
「それ俺も気になる、教師って出会い無さそうだけどどうなん?」
「つか銀八って彼女居たりすんの?」
「ちょっと…!! 質問してんの私なんだけど!!」
「今日1日上の空だったのも女関係だったしして?」
最後に関しては鋭い考察にドキッとする。
気付けば壁際へ追い込まれ質問責めされる銀八は「あーーー!! うるせぇ!!」と声を上げた。
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作者名:アカツキ | 作成日時:2024年1月14日 0時