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夕食時、2人の男女は部屋に居た。
目の前には今日買ってきたヒラメの煮付けが皿の上に盛り付けられている。
『十四郎さん、......十四郎さん!!』
Aは少しばかり大きな声で土方の名を呼んだ。
それも無理はない。
土方の視線は真っ直ぐ彼女を見詰めていて、これ以上は穴が空いてしまうとすら錯覚する。
「手前ェは油断し過ぎだ」
『何の話ですか』
「.........」
その質問には口を閉ざし、眉間に皺を寄せてはようやく視線を逸らした。
Aはかちゃりと机に箸を置き、また『十四郎さん』と今度は静かに呼んだ。
『何か不安になることがありますか?』
「...ンなもん」
『自信がないのですか?』
「違ッ」
『それとも信用がないのですか?』
「違ぇ......ッ!!」
大きな声を出して否定する土方にAは彼を真っ直ぐ見た後笑う。
その反応には土方も戸惑うかの様に彼女の次の言葉を待った。
『あはは、ふふ…ごめんなさい』
『知ってる』
『揶揄っただけです』
改めて箸を持ち、多少冷めてしまった夕食に手を付ける。
本当は気付いているのだ。
彼が何に対してモヤモヤした気持ちでいるのか、何に対してイラついているのか、何に対して焦燥感に苛まれているのか。
「......お前...、まじで後で覚えとけよ」
『も、もう忘れた』
「ほう? なら思い出させるまで、だ」
『鬼!!』
「ふっ、よく御存知で」
ニヤッという効果音でも聞こえてきそうな、そんな不敵な笑み。
あっという間の形勢逆転。
この日はやけに騒がしい夕食となった。
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アカツキ(プロフ) - -sara-さん» 此方の作品も読んで下さり、そしてコメントまで有難うございます。夢主ちゃんは皆様のご想像の中で存在して欲しいので詳しく設定等は記載しないのですが、sara様の頭に夢主ちゃんが浮かんでくれて嬉しいです! お褒め頂き光栄です、有難うございます (2021年8月16日 8時) (レス) id: 2cb0f29e5d (このIDを非表示/違反報告)
-sara-(プロフ) - こちらにも、こんばんはm(*_ _)mどうやら、私はアカツキ様の土方さんが大好きな様です(笑)元々好きではありましたが、素敵すぎます!あと、ヒロインちゃんも凄く好きです!なんか、映像として頭に浮かんできちゃいます。最後の「猛獣使い」が個人的に大好きです! (2021年8月16日 3時) (レス) id: 7c2d2afbf6 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - あめちゃんさん» コメント有難うございます、無事完結する事が出来てホッとしています。久々に土方落ちを書いた気がしますが、なかなかに楽しかったのでまたいつか出したいですね。応援有難うございました (2021年2月16日 16時) (レス) id: adf8f89573 (このIDを非表示/違反報告)
あめちゃん(プロフ) - アカツキさん» 完結おめでとうございます!!土方さんの良さがすっごいよく表現されていて、いつも読む手が止まりませんでした。私の作品も読んでいてくださりありがとうございます!こちらも頑張ります!改めて、完結おめでとうございます。 (2021年2月16日 15時) (レス) id: beda8b3808 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 東雲 晄さん» コメント有難うございます、途中文章ミスがあり申し訳ありませんでした... ご指摘有難うございました。またご縁がありましたら作品を読んで頂けると嬉しいです (2021年2月16日 7時) (レス) id: 3bd9d4536b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2021年1月25日 23時