1. ページ1
身体のあちこちが痛い。
切り傷は白い衣服を破き皮膚から赤い血を滲ませる。
重い身体を何とか支え歩いては木の根元に腰を下ろした。
とにかく今は呼吸を整え、仲間の元へ戻らなければ…。
しかしながらこんなボロボロの姿を仲間に見られては何を言われるか分かったものでは無い。
「はぁ〜〜〜、」
深い溜息を吐き出すと何処からか『お兄さん』という声が聞こえる。
こんな所にまで敵の追っ手が来ていたかと素早く体勢を整え刀に手を掛けたが人っ子一人見当たらない。
幻聴か、はたまた聞いてはいけないものを聞いてしまったか。
顔を青くしていると『そっちじゃなくてこっち』と今度は頭上から声が降ってきた。
見上げるとそこには
敵意も殺意も感じないそれに、ゆっくりと刀から手を離す。
『そんなに良い匂いさせて歩いてると危ないよ』
身体を捻り器用に木の枝から地面へと着地する其奴が軽い足取りで近付いてきて来るもんだから一、二歩後退る。
『その血、止めてあげようか』
ポタリポタリと、滴り落ちる血液に女の目が赤く光った。
思わずゴクリと息を飲む。
異質とすら言える其奴に、不思議と畏怖の念は消えていた。
「...止められんのかよ」
その言葉にニィと上げられた口角の隙間から人間にしては鋭い八重歯が見て取れた。
『お兄さん、名前は?』
「.........銀時、坂田銀時」
名前を教えてしまったあの日から全てが変わってしまったのかもしれない。
『じゃ、銀時、これは契約だ』
「契約?」
『そう、貴方と、
そう言って手を取り彼女が舐めた傷からはあんなに止めどなく出ていた血液がピタッと止まっている。
「お、まえ......」
『私はA、よろしくね、銀時』
「A」と名乗る其奴の背後には眩しい程の月明かりが照らしていた。
---
255人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アカツキ(プロフ) - 美姫さん» コメント嬉しいので大丈夫ですよ、ありがとうございます。此方の作品も完結の目処が経ちましたので最後まで楽しんでいただければと思います、応援ありがとうございました (2022年4月13日 7時) (レス) id: 0c162c5444 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - さいっっっっこうです!!何度もコメントしてしまい申し訳ありません。もう日々の楽しみとなってます!昔の作品も読み返しているところですが、本当にどの作品も面白いです。無理しない程度に頑張ってください!本当に応援してます! (2022年4月13日 4時) (レス) @page30 id: 5e34f22924 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 美姫さん» 初めまして、温かなコメント有難うございます。そろそろ完結に向けて動き出しますので見守ってくださると嬉しいです。終わり次第また新作も出す予定ですのでお時間ありましたらまた是非読みに来てください (2022年4月9日 0時) (レス) id: 5f592be880 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - アカツキさんの小説本当に大好きです。これからも応援しています!頑張ってください! (2022年4月8日 16時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - RIOさん» コメント有難うございます、読んで下さり嬉しいです。更新遅れ気味で申し訳ありません...またぼちぼち更新しますのでこれからもよろしくお願いします (2022年4月6日 16時) (レス) id: 9759a783ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アカツキ | 作成日時:2022年3月8日 23時