五十四 ページ9
あまりにも急に住人の増えたその家には、日常生活に必要なものが一つずつ足りなかった。
気がつけば日は暮れていて、夕飯をご馳走になたあと、リビングの長椅子の上で横になる。
私の登場で終始落ち着きのなかった神楽ちゃんも、どうやら寝静まったみたいだ。
.......けれど、私は眠ることが出来なくて。瞼を閉じてじっとしているだけでが、どうにかなってしまいそうだった。あれだけの時間をやり過ごせたのは紛れもなく、"彼"が居たから。
彼との逢瀬が約束された空間だったからだ。
今となっては、その安否すら不明であって。
高杉さんは何をしているだろう?
私のことを探してくれているだろうか?
私のことを、覚えていてくれているだろうか...?
思わず飛び起きて、誰もいないリビングを見渡した。昼間の活気を失ったそこは閑散としていて、寂しさをより一層駆り立てる。
「....どうしよう。」
棚の奥から神楽ちゃんが引っ張り出してくれたマグカップを手に取り、キッチンへ向かう。
蛇口をひねり、水道水をぐっと流し込こんだ。...外の温度に染まったそれは、生温くて余り美味しくない。
「おい。」
突如降りかかる声。驚いて後ろに振り返れば、ぴたりっと頬に紙パックが当たった。いちご牛乳をこちらに差し出す坂田さんは、全くの寝起きといった酷い顔をしている。
「んなもん飲んでねーでこれ飲め。」
「いいんですか?」
「俺が特別に許可する。」
私の手からマグカップを奪い、パックと一緒にリビングへ持っていってしまう。並々と注がれたグラスを前に、机で向かい合わせになった。
「...えっと、いただきます。」
「どーぞ。」
本当のいちごと牛乳じゃない、安っぽい味。例えるならプッチンプリンの良さだ。人工的なこの風味が、どこか落ち着く。
「....ねらんねーの?」
「はい。やはり、環境が変わったので。」
なかなか寝付けないんです。
この嘘は、いつまで突き通すことが出来るだろう。そんな些細な隙を、坂田さんのあの目は見透かしてしまう気がしてならなかった。
1口ずつ減っていくグラスの中身。
「なんで坂田さんは、私の事引き受けてくれたんですか。」
沈黙を破ったのは、そんな私に一言だった。
口の中には、あの甘みが残っている。
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高杉さんお誕生日おめでとうございました(40分弱オーバー)
時系列でいえば物語も丁度現実と同じぐらいなんですがAは誕生日知らないし多分銀さんも教えてくれないので本編では特には。
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時