五十二 ページ6
連れてこられたのは、木造二階建ての一軒家。
一階はスナックを経営しているらしく、店の前には暖簾がかかっていた。どうやら警察の船で島を出てから既に二ヶ月が経過していたようで、今日は七月も終わりにさしかかった頃らしかった。
久々に外の空気を吸って、時の流れを感じる。
確かあの部屋にいた時、高杉さんは初夏であると言っていた。
逆算すると五月の初め頃だったのかもしれない。
『紫陽花はもう咲いているでしょうか。』
なら、私がそう言った時まだ、見ごろではなかったのだろうなと思った。
「あの...、坂田さん。本当にお邪魔してしまって大丈夫なんですか?」
「社長の俺がいいっつってんだからいーんだよ。そりゃいきなり知らねぇ男に家こいなんて言われちゃ驚くのも無理ねえけど。あー、あと銀さんって呼んでくれりゃいいから。」
「えっと、その、ぎん...さんは社長さん、なんですか。」
「まあな。見ての通りだ。」
そういって指さすのは、筆で豪快に書かれた様な『万事屋銀ちゃん』の看板だった。万事屋と言われても、なんだかぴんとこない。ばんじと書いてよろずと読む。
何でも取り揃えているお店、とかだろうか。考え込む私を横目に、坂田さんは二階の戸をがらりと開いて黒いブーツを脱ぎ捨てた。
「とりあえずあがれよ。こまけぇ事は後で説明すっから。」
小さい声でおじゃまします、と呟く。リビングに入るとそこには『糖分』の大きな二文字と、青い長椅子と。そしてまだあどけない顔つきの少年と少女が一人ずつ、こちらを見つめていた。
「あっ銀さんお帰りなさい!」
「依頼アルか?」
二人に投げかけられた質問に、視線を泳がせる坂田さん。ぼりぼりとその銀髪の頭を掻きながら、けだるげな声を上げる。
「まあ頼まれたわけじゃねーけど、仕事って事にゃ変わりねえな。捜査協力ってことではした金は出るし。」
「捜査ってことは...もしかして真選組ですか。でも珍しいですね、あの人たちが銀さんにわざわざ仕事寄こすなんて。」
「いやまあ、銀さんが頑張ってゲットしたっつーか。」
何処か気まずそうに要点をぼやかす坂田さんに、赤いチャイナ服の少女は怪訝そうな顔を向けた。
「なんか銀ちゃん変アル。はっきり言うネ。」
ちらりとこちらに視線をやる坂田さん。
助け舟になれば、と私は一歩前に進み出て、精一杯の笑みを浮かべる。
「はじめまして。こちらに住まわせていただくことになりました、野崎Aです。」
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時