五十三 ページ7
坂田さんが壁にのめり込むまで、本当に一瞬だった。
わずかな間が開いた後、二人の蹴りが見事にクリーンヒット。おもいっきり空気を吐き出した彼は、情けない悲鳴を上げる。
「....見損ないました銀さん。」
「一回しょっ引かれてくるヨロシ。」
坂田さんは、強打した後頭部をさすりながらヨロヨロと立ち上がった。壁が粉砕しているけれど大丈夫なのだろうか。
「何しやがんたてめぇら!!せめて話くらい聞きやがれ!!」
「欲に負けた中年の言い訳何て聞きたくないネ。」
「そうですよ。どうせ下心しかないんですよね、わかってますから、潔く諦めてください。」
冷ややかな軽蔑の目線が銀髪の彼に突き刺さる。
年齢も性別もバラバラでどういう繋がりなのか、あまり見当がつかない三人。けれどまるで、家族の様だと思った。
なんだか暖かくて、つい微笑を零す。
すると三人が少し驚いたような顔でこちらを見つめていることに気が付いた。
「あ、すみません。なんだか....いいなぁと思いまして。」
いきなり私を引き取りに来たよくわからない男の人、坂田さん。その印象が一気に覆った瞬間だった。
「....つーか俺から行っても聞かねぇからさ。お前から言ってくんね?」
「はい。あの、詳しい事は良く私もわかってないんですけれど。行くところがなくて...。しばらくの間、お世話になる事になったんです。」
「そゆこと。仕事の一環だから。やましいことなんてこれっぽっちもねーの!」
顔を見合わせ、呆れかえったようなため息をつく二人。
こちらに近づいてきたチャイナ服の少女は、文句を言い続けている坂田さんを無視しながら、ニコリと笑った。
「私神楽ヨ。万事屋のリーダーはこの私ネ。」
「僕は志村新八です。まあその女の子と一緒で、店の従業員なんです。よろしくおねがいしますね。」
礼儀正しく名乗る少年、新八君は、眼鏡を押し上げながらそう自己紹介をする。
私も頭を下げれば、神楽ちゃんがぎゅうと私の服を引っ張った。
「A、気を付けなきゃダメアルよ?銀ちゃんは何してくるかわからないネ。一つ屋根の下同年代のおなごが居たら....」
「おーい神楽ちゃーん?いい加減な事言わないでくれるぅー?」
「正直僕も心配ですよ。なんなら僕の家に来て貰った方がいいんじゃないですか?姉上も居ますし。」
何かわけありみたいな。
そんな冷たい表情をした坂田さんは、「いや、俺が預かる。」と言う。その空気を感じ取ったのか、それ以上の言及はされなかった。
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時