六十一 ページ16
「お布団、お洋服、コップはあるし歯ブラシと....このくらいですかね。」
「金あんだからもうちょい着物買い足してもいいんじゃね?」
「でも一着が高いですし。帯も含めるとなると結構しちゃいます。」
「いーんだよ。足りない分は予算として真選組に請求しちまえば。」
大きいものは後日郵送にしてもらったものの、荷物は抱えきれないほどまでに膨れ上がっていた。自分の財布から出ているお金ではないからか、坂田さんはずいぶんと気前のいいことばかりを言う。
あと流石の真選組だって私の下着代は払ってくれないと思う。
ついつい買いすぎてしまった自覚はあった。
どのくらい万事屋で生活をするのか見通しは立っていないが、ひとまず暮らせるだけの日用品はそろっただろう。
「駐車場まで運べるか?」
「大丈夫です。」
「......とりあえず、それだけよこせ。」
私から一番大きな袋をひょいっと取り上げてしまった坂田さんは、すいすいとショッピングセンター内を進んでいく。両側にはアンティークな雑貨や、今流行りの服がずらりと立ち並んでいる。
ついそちらに目線を持っていかれてしまって、坂田さんが突然立ち止まったことに気づけなかった私は、ごつんっと鼻の先を背中に激突させた。
「いったっ。どうしたんですか。」
首をかしげるように背の向こう側を除けば、そこには意外な人物が構えていた。
黒服に身を包んだ、私のトラウマである。
「っ!」
「よお。買い物か、万事屋。」
真選組での出来事は八割以上覚えていない。かろうじて残っている記憶も朧げで意味をなさないものばかりだ。
...けれどその時の感覚が染みついているかのように、体が強張るのがわかる。あの鋭利な目線で引き裂かれてしまいそうだ。フラッシュバックするいくつもの光景に恐怖し、坂田さんの背後に隠れて着物の裾を握りしめる。
我ながら子供じみた行動だとは思うけれど、状況を察し庇う様な姿勢をとる坂田さんは、やはり安心感を与えてくれる存在だった。
「おいおい。怖がってんじゃねぇか。誰かさんのせいで、な。」
「.....るせぇな。てめぇには関係ねぇだろ。こっちは仕事なんだよ、仕事。」
「仕事だからって無実の女なぶった奴が偉そうな口たたいてんじゃねーよ税金泥棒が。」
「いい加減にしねぇと公務執行妨害らへんでしょっぴくぞ。」
「はー怖いねぇ職権乱用たぁ。」
たちまち合戦の火ぶたが切られ、終わりのない応酬が始まった。
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時