六十二 ページ17
「それにまだ、女が無実だと決まったわけじゃねーしな。」
彼の鋭い眼光は、まさに獰猛な獣のそれである。あの厳しい目つきで睨みつけられてしまっては、何も言えなくなってしまう。
職業病みたいに、相手の胸中を推しはかろうとする様が苦手だ。
「あはは...まあ、そうですね。嫌疑を晴らせるよう、頑張ります。」
「一先ず俺の目を見ろおい。」
「いやー....その。............無理です。」
坂田さんを防御壁にして、肝心の目線はタイル張りの床に集中させている。
助けをもとめ彼の顔を見上げれば、毛嫌いされる土方さんをあざ笑うように、心底面白そうな顔をしていた。
「随分とまぁ嫌われちゃってんじゃないの、副長さんよ。っつーかんなとこで何やってるわけ?」
「見廻りの途中で軽食買いに寄っただけだ。」
「見廻りって、真選組の方はパトロールもされるんですか...?坂田さん。」
「いや、目の前にその真選組の方が居んだから普通俺に聞くだろ。わざわざそいつ名指ししてまで無視すんのやめろ女。」
別にそういう意味ではないのだけれど。
素早く突っ込みを挟んでくる彼とは以前目を合さず、坂田さん経由で会話をする。
「そーなんじゃねぇの。お巡りさんは大変なこった。」
「ああ、そういう事で俺は暇じゃないんでな。この辺でお暇するぜ。せいぜい、高杉の奴に殺されないよう気ぃつけることだな。」
ファーストフードの袋をぶら下げ、私たちの隣を通り過ぎようとする副長さん。
けれど最期の台詞に明確な反応を見せた坂田さんが、それを良しとはしなかった。がっしりと腕を掴まれた副長さんは、怪訝な表情を浮かべる。
「―――そりゃどういう事だ。」
すっと細められる目には、思わずひかれてしまいそうな程に真剣な色が見える。眉間にしわを寄せたまま坂田さんの手を振り払う彼もまた、冷徹な顔をしていた。
「どうもこうもねえだろ。自分の兵力を危険にさらしてまで取り戻しにくるほど、その女に利用価値があるとは思えねぇからな。...そうとなりゃ、消されるの一択だろ?今回の囮作戦は、送られてきた刺客から裏をおびき出してやろうって算段だしな。」
「ふうん、...まあ、警察としちゃ妥当な判断か。」
「んだよその言い方は。」
まるで何かを、知っているみたいな口調で副長さんを翻弄する。
旧友を語る彼は、少し楽しそうにも見えた。
「あいつはぜってえ来る。―――こいつを取り戻しにな。」
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時