五十 ページ4
薄らと目を開けると、そこには見知らぬ男性が座っていた。先ほどの黒髪の方とは対照的な銀髪のその人は、怠そうに欠伸をしながら方杖をついている。
鈍痛に耐えながら彼の顔をみつめていれば、罰が悪そうに頭をぼりぼりと掻きはじめる。
「あーなんだ、俺は....昔あったことあんだけどよ。覚えてっか。」
「いえその........すみません。覚えてなくて。」
「そうか。」
それで途切れてしまう会話。まるで訳ありだとでも言うみたいに、男の人は終止視線が泳いでいて、挙動不審だった。凄く落ち着きがない。
「そうだ。俺は坂田銀時ってんだ。」
「はあ。」
「お前は？」
「私はえっと。Aです。苗字は確か...野崎、だった気がします。」
「気がする？」
聞き返されてしまうけれど、私はいったいどこから説明すればいいのか皆目見当がつかず、口ごもってしまった。戸惑う私を察してか、男の人はとりあえず「野崎A、な。わかった。」とだけ言ってくれた。
「あの、私。記憶が....なくて。あなたの事も、自分の苗字も忘れてしまったんです。」
「............は？」
「あのその。変な事言ってすみません。でも思い出せなくて。」
後ろで控えていた黒髪の人も、隊長さんも。驚いたように二人して顔を見合わせている。そういえば薬で尋問されていたようだけれど、その時の私は記憶がない事について何も言わなかったのだろうか。
「どういうことでさァ。」
「そのまんまなんじゃねーの。そりゃいくらんなもん打ったって吐かねぇわけだ。」
「ッたく。そういう事はもっと早く言いやがれ。」
口々に何か言い始める三人。その視線は私一点に注がれていた。
「なら、やっぱさっきの案で異論ねーだろ？このまま閉じ込めといたって、薬やりまくたって、思い出せることも思い出せねーんだし。」
「.............仕方ねえ。これだけの間尋問しといて何の成果もあげられなかったんだ。上もいい加減しびれを切らしてる。そのくれぇの許可は降りるだろ。」
「じゃあ決まりな。」
ガタリッと音を立てて、銀髪の人が椅子から立ち上がった。私を見下ろす彼は何処か寂しそうな顔をしている。
「ほら、さっさと手錠外しやがれ。」
「何偉そうにしてんでィ。」
渋々と鍵を取り出した隊長さんは、何を考えたのか本当に私の枷を外してしまう。久しぶりに軽くなった手足を、銀髪の人はぐいっと掴みこんな事を言ったのだ。
「今日からお前、うちに来いよ。」
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★九尾★(プロフ) - 面白いです！めっちゃ楽しんで読ませてもらってます！更新頑張ってください！ (2018年10月18日 23時) (
レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます！他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです！今後もよろしくおねがいします！ (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました！今後も楽しみにしております！ (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです！コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします！！ (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...！！ありがとうございます！この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います！ (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しののめ | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年7月22日 2時
