五十九 ページ14
「お前こそンなとこでふらふら何やってんでィ。」
「私は、散歩ですよ。何分ずっと座りっぱなしだったものですから。働こうにも体がなまってしまっているのでリハビリみたいな感じで。」
「働くって、バイトでも始めんですかィ?」
「ええまあ。予定、ですけど。」
まだ日元に出てきて日が浅いため、もう少し体を慣らしてから生活費を稼ぐらしい。
坂田さんの善意により家賃を払う必要が無いのは大きいです、と微笑むが、旦那のがめつさを彼女はまだ知らないんだなぁとぼんやり思った。
「お前、希望の業務内容は?」
「...そうですね。歌舞伎町の方と仲良くなれる接客業がいいなと。」
「個人経営で時間の融通が聞きやすい、しかも給与が良くて多少のまかない付きってのはどうでィ。」
「あーとってもいいですね。」
「なら決まりでさァ。」
すると隊長は彼女の腕をつかみ、強引に引っ張っていった。
当の本人はといえばやはり戸惑いが色濃く現れている。彼女が投獄されていた島での様子からするに、多分隊長のことは苦手なんだろうけれど。
旦那の所に行ってから、何処かその表情は落ち着きを見せたように思う。
すぐに人混みに紛れ込んでしまう2人を追いかけながら「待ってくださいよー!」と叫んだ。
けれどそんな慈悲はもちろんかけてもらえない。
▽▲
「決まりね!」
「...はあ。」
眩しいほどの笑顔である女将さんは、腰に両手を当ててそう言い放つ。
連れていかれたのは絶賛バイト募集中の茶屋だったのだ。
万事屋に来てからというもの常に視線を感じていたため、思い切ってその正体に声をかけたのだけれど。
それが巡り巡って働き口決定に繋がってしまった。
隊長さんは仕事とはいえど、若干やり方が雑だったとはいえど、助けてくれたことに変わりはない。
それに彼は年下だ。
大人の余裕と自己意志の低さを履き違えた私は、いつの間にか首を縦に振っていた。
「何微妙そうな顔してんでさァ。」
「...とんとん拍子で決まっちゃったなと思いまして。」
「優良口だろィ?」
「まあ。ありがとうございます。」
見るところによれば地域密着型、といったお店だ。女将さんも良い人で顔が広いと聞く。
...ここならきっと、様々な情報が入ってくる。
「服装は基本和装であれば自由だからね。」
「はい。では、来週からよろしくお願いします!」
紹介の恩を売ったことで隊長さんがあんみつをただで平らげた、と知るのはもう少し先の話である。
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時