十九 ページ19
「さあさあ皆さん!最後にお待ちかね、こちらの商品です。」
高らかな司会者が手を広げれば、舞台上の大きな荷物に掛かった布が捲られる。
会場中の客の目線の先には丁度人一人が収まるサイズの鳥籠があった。
施錠されたそれは、小さな監獄だ。
金色の鉄格子には真っ赤なリボンが括り付けられていて、中には色とりどりの花が散りばめられている。
少女趣味の装飾は余りにもこの場に似つかわしくなかったが、それが逆に狂気的な雰囲気を生み出しているようだった。
これはあくまで商品だ。
"こういうもの”を好む客をターゲットにしている、という事だろう。
「おおっ!」
「おお。あれは上玉だ。」
籠の中。力なく座り込んでいるのは、一人の女だった。
殆ど下着の様な露出の多い服にを着て、両手両足に枷が付いている。目元には装飾と同じリボンが目隠しとして結ばれている。
正に男を喜ばすための安っぽい演出だ。
「サキュバス、といえば一度は聞いたことがあるでしょう!伝承に登場する淫魔です!そりゃあ姿をふっと消したり魔力を使ったり、なんて事は出来ませんが。この娘はれっきとしたサキュバスですよ。サキュバスの伝承の元となった種族です!」
ざわつく会場を横目に、司会者は徐々に声のトーンを上げていく。
「愛玩動物とするもよし、転売するもよし。いくらだって使えるでしょう。この娘の特徴は、なんて言ったって悪魔であること!基本飲み食いは出来ずに男の生気を吸って生きてるんです。....ああそこのお客さん信じてませんね?」
別に不思議な話じゃないだろう。この宇宙中には珍妙な生物なんてごまんといのだから。
けれど会場にいる奴らの中の誰もこんな生物を聞いたことはなかったようだ。
着々とあの女の値段が上がっていくのが分る。
「美味しい自身のある方、どうですか。自分の味を教え込んでみては。...お客さん無しじゃこの娘は生きていけないんですよ。ほらいいでしょう?」
含みのある表現だ。
娘を買おうと意気込む男達が高らかに値段を叫ぶ。次から次へ、その数は増える一方だった。
「それにこの漆黒の瞳、愛らしい顔。何処をとっても不足無しですよ。」
司会者の合図を受けた男が、鉄格子の隙間から手を入れて目隠しをほどいた。
....ただただ空虚でくすみきった黒い瞳。
商品として綺麗に結われた艶やかな髪は、瞳と同じ色をしていた。
不健康に白すぎる肌か対照的で映える。
ふと顔を上げたその女の顔を―――俺は知っていた。
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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年5月14日 20時