【銀魂】高杉さんに閉じ込められた部屋でのお話

十八 ページ18

俺がここにくるのは二回目だった。
今日はさっきの男から書類を受け取る、ただそれだけの野暮用。
科学技術の発展しすぎたこの宇宙で、唯一信頼できるのは前時代的な紙っきれということだ。

また、一回目の時も人を探しに来ていた。
正確には人ではなかったが、その辺りの言い回しに対する訂正はいい加減聞き飽きた頃だろう。

他に鬼兵隊の情報をリークしている奴がこの船に今日訪れる、という話を下の奴から聞いた俺は、自ら赴いてぶった斬ってやろうと思っていた訳だ。
足を踏み入れた瞬間の感想は、今とそう変わらない。
下賤な輩の巣窟に舌打ちをした事を覚えている。

しかし予想外だったのは、船内が異常に込み合っていた事だ。
船内に散りばめられた趣味の悪い装飾が、余計に俺を苛立たせる。

「おい今日は期待できそうだな。」
「なんでも"悪魔"が出るらしい。」
「悪魔？んだそりゃ。どうせどっかの星から引っ張ってきた生物だろ。」
「夢のない事言うなって。悪魔だの天使だのってのは非現実的かもしれねえが、そういわれるだけはあるやつなんだろう。」

最初は何の話をしているのかわからなかったが、状況からするに、大広間の舞台で模様し物があるようだった。勿論歌や踊りなんて健全なもんじゃない。

競だ。

こいつらが群がってきた理由、それはオークションにでも参加するためだったらしい。
取り敢えず様子見ではあるが、人の多い所に行けば探し物も早く見つかるだろう。
気乗りしないが仕方がない。

もっぱらの噂である例の"悪魔"とは、その目玉商品だそうだ。
天人襲来によって俄然視野の広がった人間たちも、まだ幽霊やら天使悪魔やらといった非科学的存在の確認に間ではまだ至っていない。
いや、逆に天人によってそれが否定されたと言った方がいいのか。
江戸ができるずっと前から地球でも良く言われてきた、たとえば"妖怪"という存在。
俺たちは恐怖の対象としてその怪奇現象を語り継いできたわけだが、今の時代、それは地球に迷い込んできた天人だった。と考えるのが自然だろう。

天人であればいくらでも説明がいく。
他の星で独自の進化を遂げた生命体。ただそれだけの話だ。

俺からすれば目の前で噂話をする男たちも、人間とはかけ離れた風貌をしているせいで、悪魔と大差なく感じてしまう。
その異形達が悪魔を珍しがり、好奇心を持って話している所は、かなり滑稽に見えた。

「化け物が化け物を競にかけるたぁ、おもしれえ話じゃねえか。」

十九→←十七

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す