【歌/い/手】開かずの扉の帰宅部バンド��* −超青春型放課後タイム−

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牛肉、豚肉、玉ねぎ、ピーマン、様々なバーベキューで使われるような食材が書かれたメモをぐしゃりと音を立て握りしめた彼の顔は、憎悪に満ちていた。


「まぁ灯油くん、落ち着いて」


そらるくんが宥めようとするが、その言葉は届いていないのか否か真っ直ぐ一点だけ見つめて早足で歩く。

私たち二人は、一瞬見つめ合い、溜息を吐いてから部長を宥めることは諦め、大人しく先頭を歩く灯油さんについて行くことを決めた。


不機嫌になる気持ちはわかる。

部長と副部長という立場と名のパシリ。
掃除の時を思い出さずにはいられなかった。

それでもこんなに腹立たしそうな灯油さんは初めて見た。




……蝉の劈くような鳴き声が目立つほどに時が経ち、本格的な暑さが押し寄せてきた。

よく見ると灯油さんの額からはにじみ出るように汗が流れている。

……不機嫌な理由はもしかして、こちらの方が勝っているのか。



私はできるだけ日差しを避けるように麦わら帽子を深く被る。

コンクリートからじわじわ伝わる熱を感じると、確かにどことなく腹立たしさが出てきそうな気がした。



＊＊＊



「うお、涼しっ」


スーパーに入ると心地よい冷気が、まるで私たちを癒すかのように全身を撫で回して汗を拭ってくれる。

先程の暑さが嘘のようだった。


「本当に涼しいね……そういや、何頼まれてるんだっけ？」

「ああ、とりあえず野菜は椎茸、ピーマン、トウモロコシと……」



灯油さんも先程の不機嫌さは汗と一緒に流されたのか、素直に受け答えをしてくれた。



一緒に覗き込むようにそのメモを見ていたそらるくんが、顎を手に預け、なにか納得するように頷いた。

なんだろう、と首をかしげていると彼は買い物かごを手に取った。


「じゃあ、俺は肉と魚類と麺類探してくるよ、野菜は種類も多いし重いから、ふたりで協力して探しておいて」

「「えっ」」

「それじゃあ」


駆け足でお肉コーナーへ向かったそらるさん。


私と灯油さんは取り残されたように、ぽつんと立ち尽くしていた。


様子を伺うように覗き込むと、困った顔で首を掻きながらメモを見る灯油さんに、なんだか申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。


「……とりあえず、メモ通りの野菜探しましょ」

「……ああ、そうだな」


この人と居ると、妙な気不味い空気が流れるのは、何故だろう。


距離感の掴めなさに悩まされながら、私は買い物かごを手に取り、2人で入ってすぐの野菜コーナーに向かった。

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