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贖罪 ページ13

その日も雨だった。

一向に変わらない信号を待ちながら、花柄の傘をくるくると子供みたいに回す。
目の前の通を水しぶきを上げて、何台もの車が走り去っていった。
手に財布が入ったかばん一つだけ握りしめて、近所のスーパーに夕飯の買い物に行く途中の出来事である。

「よお、久しぶりだな。」
「お久しぶりです土方さん。」

背後からやってきて、同じく信号を待つ土方さんは、そう声をかけてきてくれた。
彼はあの時と同じ黒い傘をさしている。

六月中旬の頃、梅雨入りが宣言されてから少しばかりたった時期だった。
ただでさえ夏に片足突っ込んだような頃だと言うのに、加えてこの天候では、じめじめしてしまっていけない。
日本特有の肌にまとわりつくような蒸し暑さが鬱陶しかった。

「私、後になって気が付いたんですよ。土方さんの連絡先知らなかったなーって。」
「そういや飲みに行くときも偶然会ってそのままなりゆき、ってのが多かったな。」
「ですね。」



ざあざあと耳障りな雨。
信号は未だ赤いままだ。




「この後。お時間ありますか?」




▽▲





空調完備の薄暗い一室。
チェックインを済ませると、私が先にシャワーを浴びた。

大分薄着でタオルを肩にかけたまま「お次どうぞ。」と土方さんに声を掛けると、短い返事だけが返ってくる。

塗れた頭を拭きながら、浴室から響く音をただ聞いていた。
彼は今、何を考えているのだろう。
誠実な彼を貶めるような悪い女とこんな場所で身体を重ねることについて、彼は何を思うんだろう。




▽▲



「…本当にいいのか?」



まだ今なら引き返せる。
そう言いたげな土方さんは、本当に甘い。

もう何もかも手遅れで、既に歪な形を成した関係がすぐそこに転がっているでしょうに。

覆いかぶさる土方さんの背後でぼうっと光る照明が眩しくて、目を細める。

ぐちゃぐちゃになった真っ白なシーツの上で、散らばった私の髪を1束すくい上げてキスを落とした。


「いいよ、きて。」


土方さんの首に手を回して、耳元で囁く。さながら王子様を惑わす魔女の様だ。

キャミソールの内側に伸びてくる手の感覚を、私は多分一生忘れない。
もう十分に腹を括ったせいで感じなくなった罪悪感と、せり上がってくる快感。

大胆な態度とは裏腹に震える私の手を、強く握ってくれた。
その長い指は、幾分か乱れきった内心を落ち着けてくれる。




今夜はもう、帰れない。




-

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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月見おはぎ - ただの思い過ごしかもしれませんが、物語の中にDOESさんの曲名が入っていて銀魂愛を感じました。最高のお話を有り難うございます。 (2021年9月26日 18時) (レス) @page11 id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - コメントするのこれが初めてです、、今まで読んだ作品で一番切なくて一番胸が痛くなって一番感動したお話でした。素敵な作品をありがとうございました。。 (2020年3月17日 23時) (レス) id: 97657b2818 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» 燻った想いたちが不完全燃焼の状態で終焉を迎える。そんな物語を目指しました。そのようにおっしゃって頂けてうれしい限りです。課題頑張ってください...!高杉長編と沖田の心中ロメオを更新しております。そちらの次作でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年7月31日 21時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
なるぽんず - 読んでいて胸が苦しくなるような、心に響くお話でした。読み終わった今も悶々とした気持ちでいます。夏の宿題の読書感想文、できることならこれで書かせていただきたいくらいです(;_;) 切なくて悲しいけれどじんとくるお話をありがとうございました。次回作楽しみです (2017年7月31日 13時) (レス) id: fa67502a01 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - ローズさん» 執筆している側としても居酒屋あたりを思い返すと、考えさせられるものがあります....。最終話以降の展開の細かい展開は、やはり読者様達の御想像にお任せしたいとおもいます。こちらこそ、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年6月10日 21時

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