アラニュエの森 (ページ45)

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二人には申し訳ないことをしたな、と思いながら、そっと家の中に入った。

積み重ねてあった櫻井の本を手に取る。

少し前に、三人がこの本を囲んで話し合っていることがあった。

話の内容から察すると、宇宙船の修理ができるかどうか、というものだったらしい。

無理だ、という二宮と、やってみなきゃ分からない、という松本に挟まれ、櫻井が困ったような顔をしていたのは覚えている。

おそらく、この本が宇宙船の修理に何か関係している本なのだろう。

少し考えたサト。

文字が読めないから、サトとマサには三人が持っている本の内容は何も分からないし、三人も二人が持っている本の内容は分からない。

文字が読めさえすれば、少しは状況が変わるかもしれないのだ。

「うわ、なんかそんな魔法あったと思うんだけどな……あの魔法なんだっけな……」

顔をしかめたサト。

言語通訳は、サトは今までも使ったことがある魔法だった。

ただ、文字を読めるようにする魔法は使ったことがない。

師匠は何か使っていたような気がするが、果たしてあれは何だったか。

「アンテルプレート……いや、これは違うか……インテルプレテ……インテルプレテ？」

疑問系で唱えたものだったが、なにやら反応した。

あ、とサトは目を丸くする。

「読めるようになった」

サトが持っていた本には、『宇宙船の設計図』と書かれていた。

急いで魔法を簡略化する。

「どうしようかな、言語翻訳でいいか」

インテルプレテという呪文を、言語翻訳と書き換える。

他の本は、と辺りを見回すと、他の本には適用されなかったらしく、まだ読めないまま。

「言語翻訳」

今度ははっきり唱えれば、他の本の文字も読めるようになった。

もっと早くこの魔法を思い出せばよかった。

サトはため息をつく。

話している言葉が通訳できるのならば、書かれている文字も翻訳できておかしくないのに。

「みんなにもかけよ……サクとか喜びそう」

櫻井とはなんだかんだで話が合うため、いろんな話をしていた。

会話の中で、櫻井が研究していた分野と、サトが興味を持っている分野が重なることも分かっていた。

お互いに本はあるものの、文字が読めないことを嘆いたため、これはかなりありがたい変化だ。

「でもまずは、マサと話をしないとなあ」

机で寝ているマサと二宮を見て、苦笑した。

起きる様子はない。

サトも椅子に座って机に伏せる。

きっと、誰かが起こしてくれるだろう。