アラニュエの森 (ページ30)

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「おはよ」

珍しく、松本が最初に起きてきた。

マサも目を丸くして、おはよう！と言っている。

「マツ、早起きだね」
「なんか目覚めたから。いつも起きてくるの遅いし、今日くらいは早く行くかって思ったんだけど……なんだこれ、すごいな」

本の山を見て顔をしかめていたが、それがあの宇宙船から持ってきた本だということに気づいたらしい。

松本の顔がみるみる明るくなっていく。

「え、俺らの本じゃん！ってことは、宇宙船は無事だったの？」

目をパチパチさせて、サトを見たマサ。

「ウチュウセン？」

苦笑したサト。

とりあえず、マサに説明するのは後回しだ。

「そう。サクを連れて行ってきたよ。サクが持って帰りたいって言ったから、全部持ってきた」
「うわー、それはありがたいわ」

松本が何冊かを手に取って眺めている。

「文字が読めるってこんなに嬉しいんだな」

表紙の文字らしきものを見て、嬉しそうな顔をしている。

やっぱり、知らない場所にたどり着いて不安だったのだろうか。

「でも、これごちゃごちゃになってる。電磁波、重力波とかこの辺は二宮の本だろ……銀河系、小惑星は櫻井さん、俺のは……あった、生理学、解剖学」

松本はぶつぶつ言いながら、本の山をわけている。

かなりの量の本が、あの宇宙船に載っていたものだ。

サトが見てもさっぱり分からなかった本の持ち主は、松本は本の題名だけで分かるらしい。

テキパキとわけていく松本を見て、マサも目を丸くしている。

「あー……これはどっちだろうな」

うーん、と悩んだ松本を見て、サトが本の表紙を覗き込む。

相変わらず、文字は読めない。

「なんて書いてあるの？」
「これ？中性子星についての本みたい。二宮のかなあ、櫻井さんのかなあ」

聞いたものの、内容も分からなかった。

「その、中性子星？ってなに？」
「中性子星？俺も詳しくはないからなあ……なんて言ったらいいんだろ」

首を傾げた松本。

松本の専門ではなかったらしい。

「中性子星は質量が大きな恒星が死ぬときの天体ですよ。それ、俺の本っすね」

一緒にサトとマサも首を傾げていると、二宮の声がした。

部屋の入り口を見ると、二宮があくびをしている。

「おはよう、ニノ！」
「おはようございます。こりゃまたすごいことに……これだけ本があるってことは、宇宙船は無事だったんですか」

二宮も、さすがに本の量を見て察したらしい。